このバーゼル委員会が6月10日に暗号資産やデジタル資産に関する「リスクウェイト」の案を作って公表したことが、話題を集めています。
暗号資産の規制上の意義
2009年に最初の暗号資産(仮想通貨)であるビットコインが登場して以来、バーゼル規制の枠組みの中では、明示的には暗号資産は取り上げられてきませんでした。
もちろん、バーゼル委員会をはじめとする国際機関は、暗号資産の動向について十分注視してきました。その上で、暗号資産の価値変動(ボラティリティ)の激しさをみて、これが支払決済手段として使われる可能性は低く、投機的な投資の対象となるだろうと予想しました。これは、概ねその通りとなりました。
その上で、当面必要な規制は、バーゼル規制のような銀行規制ではなく、投資家・消費者保護であると考えられました。暗号資産投資が持つリスクを十分に把握しないまま、「通貨」と誤解して投資をするお年寄りなどが出てきては大変だからです。このため国際的に、当時の呼び名であった「仮想通貨(virtual currency)」という呼び方をやめ、「暗号資産(Crypto-Asset)」と呼ぶことで合意をしました。「通貨」と誤解して投資をする人が出てこないようにという配慮です。日本でもこれに合わせて、資金決済法の記述を変更しています。
この間、銀行セクターへの影響についても、もちろん慎重に調べてきました。最大の関心は、銀行が預金者から集めたお金で暗号資産を買っていないかというものです。しかし調べてみると、銀行セクターによる暗号資産の保有は、当時ほとんどありませんでした。
こうした中で、暗号資産へのリスクウェイトの設定などを敢えて行うかどうかは難しい問題です。これを設定すれば、むしろ銀行に「暗号資産に投資しても良い」というメッセージを発したと、誤って受け止められるリスクもあるからです。