現場にITを定着させ、効果を出すまでが仕事

――2010年から始めた数々の取り組みの効果として従業員の方のマインドが変化し、ITを業務に受け入れる土壌ができあがっていった、ということなのですね。

宍倉氏 しかし、ここまでは現状の業務を効率化しただけ、外で仕事ができるようになっただけ。真の働き方改革を行うために、ユビキタスな業務環境を整え、現状の業務の流れを変える必要があるのではないか。そのように考え、仕事の仕方そのものを見直そう、という動きが始まりました。

 その一例が、デバイスの利用にも慣れて業務効率に変化が見えてきた中で、「現場監督の働き方」に注目したことです。そこからは、少子高齢化といった社会的背景による現場の減少がみられる一方、労働時間は変化しておらず、「現場へ出向いている時間」が減少していることが見えてきました。

 次にその理由の分析をしたところ、現場へ出向く時間が減少している要因として、さまざまな現場への移動時間と、会議などの打ち合わせの増加があるとわかりました。そこで、第一に現場を充実させることを優先に、「現場監督の現場労働時間を50%以上にする」という目標を設定したのです。その上で現場に行けない時間の効率化を図り、余った時間は現場に向かえるようにしました。

 ここまでくると、徐々に利用者から具体的な要求が出てくるようになります。「こういったデバイスがないと仕事ができない」といった具合です。それを改善しながら、PDCAサイクルを回す。今の状態を見える化して、もっと高みを目指して対応していく。このようにして、どんどんスパイラルアップしていくような形になっていきました。

デジタル化された図面も様々な現場で活用されているデジタル化された図面も様々な現場で活用されている

 忘れてはいけないのは、システムを提供して終わりではないということです。我々のポリシーに「運用定着して効果を出すまでが我々の仕事だ」という言葉があります。だからこそ、効果が出ないところにはとことん行って現場を見るように、といつも部員に言っています。

 例えば、何かのシステムを導入したものの、現場の従業員が反発して使わない、ということがあったとしましょう。そんな時に現場へ直接足を運び、実際に使い方を見てもらう、ということです。現場監督の働き方改善の例では、IT業務部の部員約90人が現場に出向いていって、約2500名と話をしました。

 こうした取り組みの結果、業務フローでいう「家を建てる」フェーズがうまく回るようになり、作業時間を抑えることができました。社員にとっても家に帰る時間が早くなったため、家族との時間も増やすことができ、一挙両得です。このような取り組みを繰り返しながら、ようやく信頼を得てきました。