「リクルートの働き方改革」の取り組み、話します

コロナ禍で見えたマネジメントの在り方と従業員の意識変化

JBpress/2021.2.12

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※本コンテンツは、2020年11月18日に開催されたJBpress主催「第4回 ワークスタイル改革フォーラム」Day1の特別講演「リクルートの働き方―コロナ禍でのオンラインコミュニケーション事例から見えるマネジメントの在り方と従業員の意識変化―」の内容を採録したものです。

株式会社リクルート
執行役員(人事・総務担当)
野口 孝広氏

経営は時代の変化に合わせ、仕組み・環境づくりに注力するべき

 リクルートでは10年ほど前から働き方改革に取り組んできました。現在に至るまでに数々の成功や失敗を経ており、新型コロナウイルスの問題が深刻化して以降は新たな課題も浮かび上がってきています。

 働き方改革に取り組むにあたっては、まず前提となる考え方が大切です。当社では、時代認識と情報の取得方法という2つの観点で分析しています。

 平成の中盤頃までは、現在と比べてビジネスの変化が遅く情報の流動性が低い時代であり、経営が情報ピラミッドの頂点で全てを掌握できる状態にありました。故に、経営はじっくり計画を立て、現場は着実に計画を実行し、ミドルマネジメントがその行動を管理する、というのが成功するための1つのメソッドだったと考えられます。

 ところが、インターネットが世に広く普及すると、ビジネスの変化が早く情報の流動性が高い時代に変わり、経営が全ての情報を把握するのが困難になりました。現代においては経営がじっくり計画を立てているようでは競争に勝ち残れないでしょう。となると、経営と現場の役割分担もおのずと変わってくると考えられます。

 例えば、現場で何が起こっているのか、自社の商品・サービスに優位性があるのかないのか、といった状況の判断は、現場でスピーディに行う方が良いかもしれません。一方、ビジネスの変化が早い状況下で、個人やチームのポテンシャルをいかに引き出すかといった仕組み・環境づくりの重要度は増しています。この点において、経営は今まで以上に力を入れる必要があると考えられます。

 当社では、この前提となる考え方をもとに働き方改革を進めてきましたが、当初はどうしても「総論OK各論反対」になりがちでした。人事制度やオフィス環境、IT、マネジメントといったさまざまなテーマを横串で取り組むのが困難だからです。

 これは多くの企業で起こりがちな問題であり、その解決策として、働き方改革はトップダウン型で行うべきという論調があります。もちろん、企業によってはトップダウン型が機能する場合もあるのでしょうが、当社の企業風土には全く合いません。そこで独自の進め方を模索し、フリーアドレスやマネジメントツールの開発といった小粒な施策をいろいろと試すことで進めてきました。

 いずれにしても改革を進める際には、目的を明確にしなければ始まりません。当社では働き方改革の目的を「イノベーション創出の加速」としています。イノベーション創出を加速させるには、どういう環境を整備するべきか、より効果的な環境の組み合わせはあるか、という仮説のもとに施策を打ち出しています。

 施策を試す際に再現性を重視しているのもポイントです。「あの部署だからできた」という話ではスケールしません。再現性を確保するため、どんな施策を打つにしても決まった手順に当てはめて取り組んでいます。

 当社の手順では、初めに「可視化」をします。業務のプロセスや価値を数値化(可視化)できないものは再現性がないため、そもそも取り組みません。可視化によって、必要なコストや人員が割り出せたら、次の手順としてそれらを「置き換え」「集約」「削減」のふるいにかけます。その結果が、時間短縮(≒時間創出)につながります。

 目的はイノベーション創出の加速ですから、重要なのは、創出した時間を何に使うかです。時間を何に使うかが難しいわけですが、この一連のサイクルが回せる見込みがあるかどうかでやるかどうかを判断しています。