現場力を高め、強い組織をつくる
段違いな現場改善を実行し続けることが現場力を高めるのである。高い現場力を実現するための要素を3つに分けると、
①現場が実現すべき方向を示し続けること(ビジョン構築共有)
②目指す方向に進む力をつけること(課題設定・解決)
③課題解決マインドを持った組織になること(組織風土)
となる。
●現場が実現すべき方向を示し続ける
現場が実現すべき方向とは自社の競争力を高めるためのビジョンや経営目標、方針、達成するための方策を具体的に示し、全従業員の行動につながるものでなければならない。そのためには、ものづくりの機能を開発・設計、調達、製造、検査、物流、またそれを支える管理機能として生産技術、品質保証、生産管理、保全などに分け、それぞれの機能をどう高めると実現すべき姿に到達するのかを、きめ細かく描く必要がある。
●目指す方向に進む力をつける
工場の実現すべき姿に到達するには、
・課題をどのように設定するか
・課題解決を進めるためのリソースをどのように確保するか
といった2つの問題を解決しなければならない。
課題設定を行う1つの方法として、まずは本当に価値のある作業や業務(基本機能作業)は何かを突き詰め、基本機能作業を最も早く、精度良く行うことを考える。さらに、価値のない作業(補助機能作業、不稼働)を極限まで削減することを考えていく。この考え方はスタッフの業務にも同じように適用して検討すべきである。
現場の管理者は課題設定や課題解決は自らの役割であると認識し、強い決意を持って進めなければならない。課題解決のための改善を実行、リードし、部門連係を行うのは、現場の管理者なのである。また、こうした状態をつくるのが経営者の役割であることを忘れてはならない。
●課題解決マインドを持った組織をつくる
課題解決を継続している組織には「課題解決マインド」が備わっている。
課題解決マインドとは「目標実現のための課題設定を行い、課題解決方法を探求し続ける心構え」であり、トップには自らが課題設定や解決への働き掛けを実践することが求められる。さらに、どのような環境においても強い意志と粘り強さを持って進んでいく、進まなければならない、こうした雰囲気が常に醸成される組織にしたい。
そのためにはマインドを持っている人が行動できる場をつくり、行動につなげ、続けることで雰囲気をつくるのである。鍛えれば実行力は上がるが、はなから実行する場がなければ何も変えることはできない。相互に叱咤激励し続けられる組織になって初めて「課題解決マインドを持って行動している実行力の高い組織」になっていると言える。
段違いな現場改善と現場力向上は一朝一夕には実現しない。だからこそ早く着手してもらいたい。現場を取り巻く環境が大きく変わり、全員が危機感を持っている今こそ現場を変えるチャンスかもしれない。
本稿が企業の生産性向上を実現するヒントになれば幸いである。
コンサルタント 角田賢司(つのだ けんじ)
生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センター長
シニア・コンサルタント
IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品など、多業種で収益向上の支援を実施。現場の生産性向上、品質向上、調達コストダウンや在庫削減など複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年はタイ・中国などのアジア製造拠点支援として生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を実践。