ブロックチェーンや分散型台帳技術の活用の中で、とりわけ経済にとって有望なのは、「スマートコントラクト」など取引の効率化への応用であろう。「デジタル通貨フォーラム」の座長を務める元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が解説する。
ブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)の応用形態として、これまではビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)に焦点が当たることが多かったように思います。
紙や金属が人の手から手へと渡ることで流通する現金は、「モノを買える権利がチェーンのようにつながっている」と見ることができます。したがって、類似のチェーンをデジタル技術で実現できるブロックチェーンの応用として、まず「お金」を考え付いたのは自然といえます。
しかし、お金にとって必要なのは「権利の連鎖」だけではありません。価値の安定を確保し、過剰発行を防ぐ仕組みがあってこそ、はじめてお金として機能するわけです。ブロックチェーンは、この条件まで満たすものではありません。だからこそ、これまでの暗号資産はもっぱら投機の対象となり、お金代わりとしてはあまり使われてこなかったわけです。