組織が人材を育て、人材が組織を変革する

 新たな価値や新事業を創出できるR&D部門に変革しようと組織機構的な改革に取り組む企業は多いが、組織機構だけを変えても現場が変わらないことには成果は出ない。前に述べた、やりやすい、やる気の出る研究開発の場づくりや、技術グループやチームで活発な技術議論が行われる場に変えていくことで強い組織が出来上がっていく。そのためには研究開発トップや研究開発リーダーがその重要性を認識し、現場を変革していくことが重要である。

 このような変革は成果が出るまで時間がかかるが、それは組織機構的な改革も同様である。組織機構的な変革の方がやりやすいためでよく行われるが、継続的な成果に結び付くのは手を入れにくい現場の変革の方だ。現場を変革することで「成果を生み出す技術人材」が創出され、その人材が増えていくことで、さらにその"場"がより良い場になっていく。このような循環がうまくできている組織から新たな価値や新事業を生み出す技術開発が行われる。

 イノベーティブな成果を求めるのなら、ぜひ現場からの変革にチャレンジしていただきたい。

コンサルタント 鬼束智昭(おにづか ともあき)

R&Dコンサルティング事業本部
イノベーティングセンター センター長 シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント

電気通信大学経営工学科卒業後、1991 年、日本能率協会コンサルティング(JMAC)入社。以来一貫して製造業のR&Dマネジメント領域の改革コンサルティングを担当。製品革新を軸に、商品戦略立案、製品コストダウン、開発力強化、新事業化展開の支援を中心に行っている。最近は新商品・新技術を継続的に創出できる組織づくりや人材育成にも注力して支援を行っている。著書に『独創重視のプロダクト革新』(2004年日本能率協会マネジメントセンター 共著)、『技術系のMBA「MOT経営」入門』(2004年PHPビジネス選書 共著)、『研究開発のGo/Stop判断』(2011年技術情報協会 共著)等多数。