ネット購入は、スーパーでの感染リスク低減や時間活用においては、有効なサービスではあるが、コスト面と社会負荷面を考えると課題がある。ネットで注文した食材・商品の受取を駅のロッカーやコンビニエンスストアなどサービス利用者の行動範囲内で受け取れるようにすることで、物流事業者の負荷低減およびサービス利用者のコスト低減を図ることができる。

 また、代行購入のサービスだけではなく、近年の共働き世帯の増加や個食化を考慮し、必要な食材を、必要量だけ、要望する状態(下ごしらえ~調理の選択)で提供することで家庭における食品ロスを低減できる。そして、提供方法は、専用容器や袋を利用し、提供~回収の循環型サイクルを構築するとともに、容器にICチップを導入することで、効率的な社会システムが実現できると考える。

新しい時代の新しい食生活スタイル

 これからの社会は、顧客ニーズの本質は何か? をとらえたサービスを提供することが重要となる。食生活であれば、購入プロセスにおける感染リスク低減や時間の有効活用、調理プロセスにおける食品ロス削減、時間の有効活用、家族を考慮した調理、により、自分好みの満足度の高い食生活を過ごすことが可能になるサービスが考えられる。

 何でもやってくれるサービスは、コスト面でも社会負荷面においても、ムリムダムラが発生しやすく持続可能な社会につながりにくく、SDGsが重視される今後の社会では通用しないであろう。我々は、顧客にも、事業者にも、社会にも好まれる新しいスタイルの食生活を構築することが求められている。

 今後の環境変化をふまえ、既存の社会インフラ利用とIoT技術を融合し、需要者とサービス供給事業者の適切な役割分担による、新しいスタイルの食生活でQOL向上を実現することを目指すべき、と考える。

◎今井 一義
日本能率協会コンサルティング 生産コンサルティング事業本部 副本部長 シニア・コンサルタント
2003年 JMAC入社。製造メーカーのコストダウン、製造現場の生産性向上、人材育成のコンサルティングの経験を活かし、農業経営の改革・改善に取り組んでいる。「企業的農業経営が『魅力ある農業』を実現する」を信念に、製造現場の改革・改善手法を農業分野に展開している。製造現場でのノウハウを活用し、現場の効率化によるトータルコストダウンに加え、栽培~加工~販売のフードチェーン全体の最適化を中心に活動。現在、九州農業成長産業化連携協議会 企画委員 IT部会長として、農業経営改革を推進している。日本能率協会コンサルティングのウェブサイト内「JMAC EYES」でもコラムを執筆中。

◎本稿は、日本能率協会コンサルティングのウェブサイトに掲載された記事を転載したものです。