D2Cブランドの成功例と失敗例、一体どこが違うのか

データ時代、店舗は「売り場」から「顧客体験(CX)最大化の接点」へ

朝岡 崇史/2020.3.16

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(写真はイメージです)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

「D2C(Direct to Consumer)ブランド」とは、自社で企画・製造した商品を自社サイトで直接販売するネット企業のことである。ブランド独自のストーリーや求心力のあるスタイルを持ち、SNSを通じて顧客と価値共創を行うことを事業モデルに組み込んでいることが大きな特徴とされる。

 2000年代後半以降になって、ボノボス(Bonobos、アパレル)、ワービー・パーカー(WarbyParker、眼鏡)、エバーレーン(Everlane、アパレル)、アウェイ(Away、トラベルグッズ)などが相次いで誕生、日本でも最近になって、ワンノバ(OneNova)、テンワイシー(10YC)、フートーキョー(Foo Tokyo)などがアパレル分野で台頭してきている。

 米IAB(Interactive Advertising Bureau)は、2019年7月に発行したレポートで、D2Cブランドの顧客について以下のように定義している(IABはD2Cを「ダイレクトブランド」と表記)。

●ダイレクトブランドの購買者は13歳以上の米国在住者の48%。より若く高収入で製品ニーズよりも自己表現的な価値を重視。
●71%のユーザがブランドを積極的にシェア。単に買って終わりではなく、SNS上での積極的な情報共有・推奨活動など多様な接点でブランドとのエンゲージメントを構築。
●他者のブランド選択に影響を与えるスーパーインフルエンサーがユーザの3分の1を占める。

 要するにD2Cブランドは、情報感度・情報の発信力が高いことに加え、ブランド選択と自己表現を結びつけて考える特性を持つデジタルネイティブ世代、すなわちミレニアル世代やその下のZ世代を核に根強い支持を集めていると考えると理解しやすい。

 一方、D2Cがユニクロのような「SPA」(Specialty store retailer of Private label Apparel:製造小売業)と違うのは「リアルな店舗」を持たず、「自社運営のサイト上」で商品を販売する点だ。このことは顧客側には利便性の提供、企業側にはオペレーションコストの削減というメリットを約束する。

 しかしながら反面、顧客との接点がほぼネット環境のみに限られてしまうので、新しく立ち上げたブランドを早い段階でアプローチしたい顧客に認知、利用してもらうには不都合というデメリットもある。

D2Cブランドの「店舗進出」に落とし穴

 このような背景の中で、本来はリアルの店舗を持たないことが売りだったD2Cブランドの「店舗進出」という一見不可解な現象が米国で相次いでいる。

 だが実はここにD2Cブランド特有の、事業成長戦略に関わる大きな落とし穴が待ち構えている。

 リアル店舗を、アマゾンエフェクトで淘汰が進む従来の小売業の延長線上の発想で商品の「売り場」と定義するか、それとも全く新しい逆転の発想、例えば「ブランド体験(CX)を最大化する接点」と割り切って(つまり「売り場」としての役割を捨てて)、「商品のトライアル」「ブランドコミュニケーション」「ユーザーコミュニティ形成」などにフォーカスするかで「店舗進出」の成否は大きく変わってくる。