『らしさ』の確立が発展の鍵
さらに安藤氏は旭川家具について、ADWやデザインコンペなどの多様な取り組みを継続してきた力や価値は疑いようがないと評価した上で、ブランドのさらなる発展の鍵として『らしさ』の確立を挙げた。
「旭川家具のデザインコンペの評価基準や個性をもっと明確にし、それを打ち出して行くことで地域ブランドが認知されていくのではないか。新しい価値や視点を提供していくことが大事だ」
これらの意見に対し前出の染谷氏は、旭川家具が世界的にはまだまだ認知されていない現状を認めつつ、旭川家具よりも自社ブランド名を前に出すのは戦略上必然だとした上で「(らしさの確立を目指す)有志がもっと出てくる環境を整えることで、いずれ旭川(家具)全体が認知されるように、しっかりと描いていきたいです」と、今後の展望を語った。
染谷氏によれば、旭川らしさの共通項は100年培った技術、北海道産広葉樹の積極活用などにあるとのことだ。しかし、メーカー各社のデザインの特色や多様性を旭川家具として一方向に揃えるべきかは議論も必要だという。
たしかに旭川家具は協同組合加盟30数社が集合体となった産地だけに、足並みを一律にそろえるのは容易ではない。しかし、こうした議論を続け、行動に移していくことが旭川家具の発展につながるのだろう。
変わりつつある環境と将来に向けて
染谷氏が「旭川らしさ」として挙げた北海道産木材の積極活用は、実際に行われた取り組みの成果でもある。旭川家具工業協同組合が行う『ここの木の家具・北海道プロジェクト』は、北海道の木で家具を作るための取り組みで、2018年12月時点で道産材の使用率が40.1%となり、2014年のプロジェクト開始時に比べ1.5倍となった。
20年前に一部のメーカーで始めた植林が実った活動だというが、こうした持続可能性の重要性に早くから気づき、産業を地域全体で育てていく風土が出来上がっている点も、今後は強みとなっていくだろう。
1990年の第1回国際家具デザインフェア旭川の開催以降、多くの施策を有機的に連動させることで、家具という産業を地域全体の文化として根付かせることに成功した旭川。これまで地域内外の力を上手く組み合わせ発展し続けてきた力で、世界への道をさらに切り開いていく。北のものづくり現場から、今後も目が離せない。