プログラムに参加するメリットや、応募先を選ぶ基準は?

 起業の経験はあった廣田氏だが、アクセラレータープログラムへの参加は今回が初めて。プログラムに参加することで、先々の展開まで見据えたサービスへとアイデアを進化させていくことができた。プログラムのメリットについても、やはり一人での起業と違い、他者の意見が聞ける点が大きかったと話す。

「自分一人だけで(起業の準備を)やっていると、自分が考えたサービスが間違いない、という風に思い込んでしまうんです。プログラムのメンターとして来て頂いている方や、他のプログラム参加者の意見を聞くことで視野がすごく広がりましたね」

 加えて資金面でのスピードアップが図れるのはもちろん、他の参加者が身近にいることで、「自分ももっと頑張らなければ」と思えるのだという。自分一人で起業を目指すとなると、モチベーションを維持するのは相当難しいのだろう。廣田氏も、9lioneの構想を思いついてから2年間、一人で準備を進めていた際はなかなかサービスを形にできなかったことを振り返り、「もっと早く(アクセラレータープログラムに)参加していれば良かったです」と苦笑する。

 また、ビジネスの成り立たせ方や失敗しにくい立ち上げ方を学べたことも、プログラムに参加することで得られた大きなメリットだという。各プログラムによって学べることは異なるだろうが、視野が広がる点は共通だろう。初めての起業であれば尚更、独りよがりの起業になってしまわないコツを学べる場として非常に有用と言える。

 このように、アクセラレータープログラムに参加するメリットは大きいが、こちらの記事で紹介されているように、現在かなりの数のプログラムが存在する。特にシード段階では参加したくとも、自分たちに合っているプログラムはどれなのか、応募先を選ぶ段階で迷ってしまうのではないだろうか。選択基準は人それぞれだろうが、廣田氏は以下の基準でOpen Network Labへの応募を決めた。

・歴史の長さや実績の多さ
・今後協業していけそうか

「歴史の長さや実績の多さ」は経験豊富なメンターが居るかどうかなど、プログラムの質に関わってくる。さらに将来設計を考えると、目先の資金面だけでなく当然、「協業できそうな企業」との関係性を構築していった方がいいだろう。

 迷った時は、各プログラムを上記の視点から見比べてみるのが良さそうだ。

事業を「加速」させる強力な手段

 資金面やモチベーション面で成長速度のスピードアップや、メンターから得られるフィードバックなどメリットばかりのように思えるが、アクセラレータープログラムに参加するデメリットは無いのだろうか?

 デメリットも無くはない。例えば、シードの段階で目立ってしまうと、他社にアイデアを盗まれてしまう危険性が生じる。また、資金提供を受ける代わりに株式を渡さなくてはならない場合も多い。こうした事態を避けたいのなら、応募はよく検討する必要があるだろう。

 しかし、基本的には「もし応募を迷われているのなら、まず間違いなく応募した方が良いと思います」と廣田氏。最後に、アクセラレータープログラムへの応募を検討しているスタートアップ企業に向けてアドバイスを頂いた。

「アイデアはあっても起業経験がなくて不安、という場合でもメンターの意見が聞けますし、資金提供を受けられるプログラムもあります。DemoDayのような発表の場も頂けますし。地方だと特にVC(ベンチャーキャピタル)との接点も持ちにくいと思うので、こうしたプログラムを利用して(東京に)出てきて起業することもできるんじゃないのかな、と思います」

 アクセラレータープログラムに参加することで、元々のアイデアをより将来性のあるビジネスモデルに昇華させることができた9lione。同サービスによって収集される価値の高いデータ群は、製薬会社からも注目を浴びている。

 シード段階の企業の場合、投資家は「人」を見て投資先を決めるという。本気で業界や社会を変えるサービスを世に出したいという強い思いがあるのなら、アクセラレータープログラムへの応募をおすすめする。思いを形にするための、具体的な手段が得られるはずだ。