(写真右から)Supershipホールディングス 代表取締役社長CEO 森岡康一氏、内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 企画官 石井芳明氏、事業構想大学院大学 学長 田中里沙氏

10月11日、KDDI傘下のSupershipホールディングスが都内で事業戦略発表会を開催した。KDDIはこれまで、モバイルインターネット市場で頭角を現している複数のスタートアップ企業との連携を推進し、新たな価値創造の可能性を模索する「Syn.(シンドット)」という構想を進めてきたが、その動向の中でスタートアップ企業同士の融合から生まれたのがSupershipだ。この日、事業戦略発表会の冒頭で、同社代表取締役社長CEOの森岡康一氏は自らを「ハイブリッドスタートアップ」という造語で位置づけた。果たしてハイブリッドスタートアップとは何なのか? スタートアップの新たなエコシステムとなり得るのか? 特別セッションとして行われた内閣府企画官・石井芳明氏、事業構想大学院大学学長・田中里沙氏との対話からその答えを探った。

大企業でもスタートアップ企業でもない
新しいビジネス創成の形

 グループの中核会社であるSupershipは2015年、KDDI傘下でデジタルマーケティング事業やネットメディア事業などを手掛けるスタートアップ5社が合併して誕生した。その後もデジタル領域のスタートアップを次々とグループに加え、設立3年目の2017年度には売上高274億円を上げるなど急激に存在感を高めてきた。2018年10月11月現在では、10社のスタートアップの共創体として活動するに至っている。事業戦略発表会の冒頭、森岡氏はこの躍進の要因として「ハイブリッドスタートアップ」という言葉を用いた。

Supershipホールディングス 代表取締役社長CEO/Supership 代表取締役会長 森岡康一氏

「Supershipは5つの小さな企業が合併して生まれ、そこにKDDIの人材も混じり合い、組織も文化も得意領域も違う者たちの集まりとして歩んできました。KDDIの資本を使って立ち上げた経緯もあるため、Supershipがスタートアップ企業なのか、大企業の子会社なのかがはっきりしない中、自分たちは何者なのか、と自問自答。たどり着いた答えが『ハイブリッドスタートアップと呼ぼうじゃないか』だったのです」

 単なるネーミングの問題ではない。この成り立ちこそが重要なのだと森岡氏。

「大企業のリソースを初めから使うことで、スタートアップを一気に成長させることができた。しかも、今後もこのハイブリッドスタートアップというスタイルの独自性を有効に追求していけば、面白いことを起こせるのではないかと考えているんです」

 自身、ヤフーにおいて「新規事業の立ち上げ屋」として経験を積み重ね、その後Facebookに移って日本での立ち上げに成功した森岡氏は、KDDIにジョインした後も革新担当部長という役割を任されてきた。スタートアップ企業、グローバル企業、日本の大企業、そのいずれもで実績を積み上げてきた森岡氏が描くハイブリッドスタートアップという構想は、日本のスタートアップにおけるエコシステムの新たな形となり得るのか――。当日開かれた特別セッションからその可能性を読み解こう。