
スタートアップ(企業やプロジェクト)と大手企業の共創を手助けする「アクセラレータープログラム」。そのニーズは年々高まっており、2018年上半期(4〜9月)もさまざまアクセラレータープログラムが実施された。そこで、各領域でどのようなアクセラレータープログラムが開催されているのか、ひと目でわかるカオスマップを作成した。
アクセラレータープログラムとは何か?
まずはアクセラレータープログラムがどういったものなのかを改めて確認しておこう。アクセラレータープログラムとは、スタートアップに資金や人材などを提供する組織・取り組みのこと。これにより、限られた期間内に一気にスタートアップの成長を促すことから“加速する”という意味の「アクセラレーター(accelerator)」と命名された。
似たような取り組みに「インキュベーションプログラム」(インキュベーション=孵化)があるが、アイデアレベルでも支援を受けられるインキュベーションプログラムとは異なり、アクセラレータープログラムは基本的に既存事業を対象としている。とはいえ、近年のアクセラレータープログラムは間口が広がっており、事業ステージを問わないものも多い。2018年上半期に行われたアクセラレータープログラムも事業ステージ不問のものが大半を占めていた。
本稿では、各領域の状況と注目すべきアクセラレータープログラムを取り上げ、いくつか紹介していこうと思う。
2018年上半期のアクセラレータプログラム・カオスマップ
インフラ領域
インフラ系企業が主催するアクセラレータープログラムは、事業ステージを問わないものが多く、幅広いアイデアを募集している。また、IoTやAIなどの技術を用いたアイデアを求める傾向も多く見られた。
興味深いところでは、先端技術を活用して「人手不足」への対応を目指す企業がいくつかあったこと。労働人口が減少していく日本の未来を考えると、今後、この類のアクセラレータープログラムは増えていくと予想される。
・KEIYO GAS ACCELERATOR 2018

千葉県北西部で都市ガスの供給を行う京葉ガスが主催。「健康」や「教育」、「シニア・ライフスタイル」などガス会社らしく日常生活に関わるアイデアを募集するアクセラレータープログラム。また、「人手不足」や「インバウンド需要」などのアイデアも募っている。
エンタメ領域
エンタメ系企業が主催するアクセラレータープログラムも、事業ステージを問わないものが多かった。アイデアレベルの企画でもしっかりサポートしていこうという姿勢なので、スタートアップ側としては応募しやすい。
募っているテーマは各社さまざま。先端技術を駆使した新たな企画や、パブリッシャーが持っているコンテンツを生かせるアプリなどだ。中でも出版社のアクセラレータープログラムは興味深い。出版不況が叫ばれて久しい昨今、厳しい状況を打開するためのアイデアを出版社が募るというケースは増えてくるかもしれない。
・少年ジャンプアプリコンテスト

少年ジャンプ編集部(集英社)が主催。「少年ジャンプ」という媒体自体や掲載しているマンガ、そのキャラクターに関する新しいアプリ・WEBサービスを募集している。
サービス・その他領域
2018年上半期、もっとも多く行われたアクセラレータープログラムは、サービス・その他の企業が主催する領域だ。事業ステージを問わないものもあれば、事業化を前提にしているものもあり、幅広くアイデアを募集していた。
各アクセラレータープログラムのテーマも多岐にわたり、他分野の知識や技術を用いて、新しい取り組みをしたいという意気込みが感じられるものが多い。加えて、サービス系事業との親和性の高さからか高齢化社会へ対するアイデアの募集も散見された。ますます進む高齢化に向けて、今後このようなテーマのアクセラレータープログラムは増えていくはずだ。
・伊藤忠商事アクセラレーター2018

総合商社である伊藤忠商事が主催するアクセラレータープログラム。人口減少や超高齢化、少子化などの社会問題を解決し、より良い「働き方」や「暮らし方」のためのアイデアを募っている。
テクノロジー領域
テクノロジー領域のアクセラレータープログラムというと敷居が高そうなイメージがあるが、意外にも”事業ステージは問わない”という募集が多い。また、当然とも言えるだろうが多く見られたのは「AI」や「IoT」といったキーワード。この辺りのテクノロジーは依然として注目度が高いことがうかがえる。特に、AIなどの先端技術を社会で実用化するためのアイデア募集は今後、増えていきそうだ。
・IBM BlueHub

IBM BlueHub(日本IBM)が主催するアクセラレータープログラム。「テクノロジーによる日本発の革新的事業の創出」をテーマに、幅広くアイデアを募っている。
メーカー領域
各メーカーも積極的にアクセラレータープログラムを開催している。事業ステージは問わないものが多く、幅広くアイデアを募っているのが特徴だ。メーカーだけあり、セレクションに通過した暁には、グループ各社のリソースやネットワークを活用できる。そのためスケールの大きなアイデアも実現する可能性が高い。この辺りはスタートアップにとって嬉しいポイントだろう。
またメーカー領域では「社会課題の解決」というキーワードも散見された。特に、人手不足に対応するための業務効率化や働き方改革、少子高齢化対策といった課題を、他者の新しいアイデアを用いて解決していきたいということだろう。
・KIRIN Accelerator 2018

清涼飲料水メーカーであるキリンが主催するアクセラレータープログラム。募っているのは、より良い社会を実現するためのアイデア。選考に通れば、酒類、飲料、医薬、バイオケミカルを中核にさまざまな事業を展開するキリンの技術やリソースを活用できる。
医療領域
医療領域のアクセラレータープログラムも2件開催された。創薬系のベンチャーに絞った専門的なものと、従来の製薬ビジネスにはなかった技術を求めるものだ。後者からは、日本の人口構造が変化していくなかで医療やヘルスケアが今後大きく変わっていくことを見越して、新たな知見や技術を取り入れたいという想いが見て取れる。
・田辺三菱製薬 Accelerator 2018

田辺三菱製薬のアクセラレータープログラムは「ヘルスケアの未来を創る」がテーマ。募っているのは、ヘルスケア市場の変化に対応していくために、他業界や新しいビジネスモデル、先端技術などと融合した革新的なアイデアだ。
金融領域
金融領域のアクセラレータープログラムは、AIやIoT、フィンテック関連のアイデアを求めているようだ。仮想通貨などの出現により、今後、社会とお金の関係は大きく変わっていくことが予想される。その変化に適応するためには、先端技術や新たな考え方が必要不可欠。そうしたことからも、金融領域のアクセラレータープログラムはこの先、増えていくことが予測される。
・MUFG Digitalアクセラレータ

三菱UFJ銀行が邦銀初として主催する「MUFG Digitalアクセラレータ」は、フィンテックなどの領域における革新的な事業プランを募るアクセラレータープログラムだ。
自治領域
自治体が主催、もしくは後援しているアクセラレータープログラムも多かった。特徴的なのは、他の領域と比べて応募のハードルが高いこと。事業ステージは問わないという募集は1件のみで、他はシードステージやアーリーステージに限定してるものばかりだ。このことから、アイデアをしっかり実現させようという意気込みが感じられる。
また地域のマーケット特性を生かした事業や、土地に根ざした事業の募集もあったが、その辺りは自治体ならではの特色だろう。少子高齢化の影響を大きく受ける地方としては地方創生の鍵としてオープンイノベーションに期待をしているのかもしれない。
・TOHOKU GROWTH Accelerator

仙台市とMAKOTOが主催するアクセラレータープログラム。「大学研究シーズ」「ICT」「既存産業でのイノベーション」「東北の強みを活かした事業」というテーマで、スタートアップを募集している。地方から新たな事業を起こそうという意気込みが感じ取られる。
加速する世の中の変化に追随するための強力な一手
ここまで見てきたとおり、2018年上半期だけでも実にさまざまな企業がアクセラレータープログラムが実施されている。募っているテーマやプロダクトの種類は千差万別であるが、すべての企業が欲しているのは、自社では作れない"何か"。そしてそれは、加速する世の中の変化に追随するための強力な一手になり得る。それを思うと、今後もアクセラレータープログラムの勢いはますます増していくはず。
これまで以上に幅広い領域で開催されるであろうし、投資に至るまでのハードルが下がっていくことも考えられるだろう。結果的に多くのスタートアップにチャンスが生まれるかもしれない。その中から、世の中を大きく変えるイノベーションが生まれても不思議ではないのだ。






