“課題先進国”日本だからできること

「17の目標」の重要性自体に異論を唱える読者はいないだろう。特に、未曽有の少子高齢社会を迎えた日本には、SDGsへの取り組みを自分ごととして捉える素地ができていると言える。

 事実、冒頭に挙げた電通の調査でも、17の目標に対する共感度の平均値は73.1%と非常に高いスコアを示しており、「これから(これからも)SDGsに関係があるような企業の商品やサービスを選んでいきたい」と回答した人は4割を超えている。やはり、より多くの企業による行動と、それによる普及がSDGs推進の鍵となるようだ。

 このように、重要な社会課題であることは分かるし、普及が求められていることも分かる。しかし実際、企業はどのようにSDGs達成に貢献すれば良いのだろうか?

 その指針となるのが「SDG Compass」だ。企業がSDGsを活用するための行動指針で、2016年3月よりグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンによる日本語版が公開されている。SDG Compassでは、企業がSDGsを活用するメリットに以下のようなものが挙げられている。

・将来のビジネスチャンスの見極め
・企業の持続可能性に関わる価値の向上
・ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調
・社会と市場の安定化
・共通言語の使用と目的の共有

 そして下記の5ステップを踏んでいけば、自社の事業戦略に合った目標を見定め、SDGsに最大限貢献できるという。

ステップ① SDGsを理解する

ステップ② 優先課題を決定する

ステップ③ 目標を決定する

ステップ④ 経営へ統合する

ステップ⑤ 報告とコミュニケーションを行う

 SDG Compassでは上記5ステップの詳細な解説や、KPI設定の手法について述べられている。現状自社でSDGsに取り組む予定が無くとも、このレポートにだけは目を通しておくことをお勧めする。

 例えばパナソニックはSDGs達成に貢献する事業活動として、神奈川県藤沢市の「サスティナブル・スマートタウン」づくりを挙げているが、ここまで大がかりな取り組みができる企業ばかりではないだろう。SDG Compassに加えて前出したSDGs日本企業調査レポート2017年度版と併せて参照すれば、他社事例を参考に、自社の強みとSDGsをどう結びつけるかのヒントを得ることができる。

 SDGsは、古来より「MOTTAINAI(もったいない)」文化が根付く日本の風土と非常に馴染みやすいはずだ。CSR活動の一環として取り組むのが企業の常だろうが、Japan Innovation Network(JIN)と国連開発計画(UNDP)が運営する「SHIPS」のように、SDGsをオープンイノベーションの機会と捉え、ビジネスによって目標達成を目指すオープンイノベーション・プラットフォームも存在する。SDGsを一つの共通言語として捉えてオープンイノベーションを視野に入れることで、より一層意義深い事業展開ができるのではないだろうか。