
電通が4月4日に発表した「SDGsに関する生活者調査」によると、国内でのSDGsの認知率は14.8%。同社が1~2月に実施した別調査(電通ジャパンブランド調査2018)では世界20カ国・地域におけるSDGsの平均認知率は51.6%という結果が出ているため、日本の認知率の低さは際立っていると言える。
一方で経営層の認知は年々拡大しており、前出の調査でも認知者は年収・情報感度共に高い傾向にあると判明している。主に企業価値を高めるといった側面から、SDGsの達成に取り組む企業が増えてきているのだ。
今回は、ビジネスマンなら押さえておきたいSDGsについて、企業単位での取り組み方を中心に見ていこう。
2030年の社会課題を先取りする「SDGs」とは
SDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略称であり、「持続可能な開発目標」と訳される。2015年9月の国連サミットで「MDGs(ミレニアム開発目標)」の後継として採択された、2016年から2030年までの国際社会共通の目標のことだ。
前身となるMDGsでは発展途上国の問題解決に焦点が当てられていたが、SDGsでは格差問題や気候変動への対策等、先進国も一丸となって取り組むべき目標が挙げられている。「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」、持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現させるための指針なのだ。
具体的には、持続可能な世界を実現するための下記「17の目標」と、それに対する具体的な「169のターゲット」から構成されている。
目標1.
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2.
飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3.
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4.
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
目標5.
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標6.
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7.
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標8.
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9.
強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10.
各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11.
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12.
持続可能な生産消費形態を確保する
目標13.
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる*
* 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。
目標14.
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15.
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16.
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17.
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
SDGsのロゴ(日本語版)(国際連合広報センターHPより引用)
ターゲットの数は目標によって違うが、例えば目標7の「エネルギー」なら下記のように定められている。*
7.1
2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2
2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3
2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a
2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b
2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
国や企業、個人が一丸となってこれらの課題を認識し、目標達成に向けて行動することが求められているのだ。
*参照:「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」[外務省仮訳]
認知度15%、普及のカギはどこにある?
冒頭で触れた通り、現在国内でのSDGs認知率は14.8%。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)と地球環境戦略研究機関(IGES)とが14日発表したSDGs日本企業調査レポート2017年度版「未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から~」によれば経営陣の認知度は昨年の28%から36%に上がっているのだが、中間管理職の認識は9%と低く、SDGs推進の課題となっている。
この状況を打破するため、「PPAP」で世界的ムーブメントを巻き起こしたタレントのピコ太郎氏が登場するPR動画を配信したり吉本興業と連携してイベントを行ったりと、政府や国連機関は普及に腐心している状態だ。
ピコ太郎 × 外務省(SDGs)~PPAP~
また、外務省が6月に発表した「拡大版SDGsアクションプラン2018」では、政府がSDGsを推進するため、各目標をより具体的な取り組みや施策に落とし込み、実行している旨がまとめられている。
他にもSDGs達成を目指して優れた取り組みを行っている企業や団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」を設ける等、普及活動に余念が無い。
“課題先進国”日本だからできること
「17の目標」の重要性自体に異論を唱える読者はいないだろう。特に、未曽有の少子高齢社会を迎えた日本には、SDGsへの取り組みを自分ごととして捉える素地ができていると言える。
事実、冒頭に挙げた電通の調査でも、17の目標に対する共感度の平均値は73.1%と非常に高いスコアを示しており、「これから(これからも)SDGsに関係があるような企業の商品やサービスを選んでいきたい」と回答した人は4割を超えている。やはり、より多くの企業による行動と、それによる普及がSDGs推進の鍵となるようだ。
このように、重要な社会課題であることは分かるし、普及が求められていることも分かる。しかし実際、企業はどのようにSDGs達成に貢献すれば良いのだろうか?
その指針となるのが「SDG Compass」だ。企業がSDGsを活用するための行動指針で、2016年3月よりグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンによる日本語版が公開されている。SDG Compassでは、企業がSDGsを活用するメリットに以下のようなものが挙げられている。
・将来のビジネスチャンスの見極め
・企業の持続可能性に関わる価値の向上
・ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調
・社会と市場の安定化
・共通言語の使用と目的の共有
そして下記の5ステップを踏んでいけば、自社の事業戦略に合った目標を見定め、SDGsに最大限貢献できるという。
ステップ① SDGsを理解する
ステップ② 優先課題を決定する
ステップ③ 目標を決定する
ステップ④ 経営へ統合する
ステップ⑤ 報告とコミュニケーションを行う
SDG Compassでは上記5ステップの詳細な解説や、KPI設定の手法について述べられている。現状自社でSDGsに取り組む予定が無くとも、このレポートにだけは目を通しておくことをお勧めする。

例えばパナソニックはSDGs達成に貢献する事業活動として、神奈川県藤沢市の「サスティナブル・スマートタウン」づくりを挙げているが、ここまで大がかりな取り組みができる企業ばかりではないだろう。SDG Compassに加えて前出したSDGs日本企業調査レポート2017年度版と併せて参照すれば、他社事例を参考に、自社の強みとSDGsをどう結びつけるかのヒントを得ることができる。
SDGsは、古来より「MOTTAINAI(もったいない)」文化が根付く日本の風土と非常に馴染みやすいはずだ。CSR活動の一環として取り組むのが企業の常だろうが、Japan Innovation Network(JIN)と国連開発計画(UNDP)が運営する「SHIPS」のように、SDGsをオープンイノベーションの機会と捉え、ビジネスによって目標達成を目指すオープンイノベーション・プラットフォームも存在する。SDGsを一つの共通言語として捉えてオープンイノベーションを視野に入れることで、より一層意義深い事業展開ができるのではないだろうか。





