ジョブを見つける方法
顧客のジョブを正確にとらえることができれば、イノベーション成功への道筋が開かれる。前掲の『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』では多くの事例を交えながら、従来のデータ分析のみでは見えてこない顧客のジョブや、その解決策を見出し、イノベーションを起こすためのヒントが書かれている。
詳しくは本書を一読いただきたいのだが、ここではより実践的な内容として、第4章で述べられているジョブを見つける5つの方法の概要を紹介しておきたい。自身のビジネスに使えないか、考えながら読み進めてみていただけると幸いだ。
1.生活に身近なジョブを探す
市場調査に頼り切らず、自分の生活の中にある「片づけるべきジョブ」を探すことでイノベーションの種を見つけることができる。自分にとって重要なことは、他人にとっても重要なことである可能性が高いということだ。
2.無消費と競争する
「無消費」とはジョブを満たす解決策を見つけられず、何も雇用しないことを指す。自社製品も競合製品も“雇用”していない人々に着目することで目に見えない需要を見出し、可能性が無いと思われていた部分に新たな成長機会を生み出すことができる。
3.間に合わせの対処策
既存の商品やサービスでは満足に解決できず、顧客自身があれこれ工夫して自分なりに対処しているジョブも存在する。潜在的顧客がどのようにやりくりしているか、どういった状況で苦労しているのかを注意深く観察することでイノベーションの手がかりを見つけることができる。
4.できれば避けたいこと
できれば避けたいジョブである「ネガティブジョブ」は多い。例えば、仕事が立て込んでいる日の朝に子どもが喉を痛めてしまった場合の「できることなら医者には行きたくない」というネガティブジョブ。『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』ではこれを解決するため、大手ドラッグストアチェーンの中に予約無しの患者を診察し、日常的な疾患に対する薬を処方する店舗を開設していったCVS[※1]ミニッツ・クリニックの例が紹介されている。
5.意外な使われ方
製品やサービスによっては、企業が想定したものとは異なる使われ方をされる場合もある。これを調べるのだ。例えば「パンを焼くための材料」として重曹を長らく販売してきたチャーチ&ドワイトは、消費者が掃除や洗濯等、様々な用途に重曹を使用していることに気がついた。これをもとに「浴室の水垢やカビを取り除きたい」といったジョブを片づけるための新製品を発表していき、大成功を収めた。
本書では、的確なジョブを見つけるための顧客への質問方法や、イノベーションを起こせる組織づくりにも触れられている。従来のマーケティング手法に物足りなさや行き詰まりを感じているのであれば特に、本書が突破口を開く一助となるだろう。ぜひ熟読して、イノベーションを起こす足がかりを見つけて欲しい。
※1:CVSは米国のチェーン薬局