メーカー領域

 各メーカーも積極的にアクセラレータープログラムを開催している。事業ステージは問わないものが多く、幅広くアイデアを募っているのが特徴だ。メーカーだけあり、セレクションに通過した暁には、グループ各社のリソースやネットワークを活用できる。そのためスケールの大きなアイデアも実現する可能性が高い。この辺りはスタートアップにとって嬉しいポイントだろう。

 またメーカー領域では「社会課題の解決」というキーワードも散見された。特に、人手不足に対応するための業務効率化や働き方改革、少子高齢化対策といった課題を、他者の新しいアイデアを用いて解決していきたいということだろう。

・KIRIN Accelerator 2018

清涼飲料水メーカーであるキリンが主催するアクセラレータープログラム。募っているのは、より良い社会を実現するためのアイデア。選考に通れば、酒類、飲料、医薬、バイオケミカルを中核にさまざまな事業を展開するキリンの技術やリソースを活用できる。

医療領域

 医療領域のアクセラレータープログラムも2件開催された。創薬系のベンチャーに絞った専門的なものと、従来の製薬ビジネスにはなかった技術を求めるものだ。後者からは、日本の人口構造が変化していくなかで医療やヘルスケアが今後大きく変わっていくことを見越して、新たな知見や技術を取り入れたいという想いが見て取れる。

・田辺三菱製薬 Accelerator 2018

田辺三菱製薬のアクセラレータープログラムは「ヘルスケアの未来を創る」がテーマ。募っているのは、ヘルスケア市場の変化に対応していくために、他業界や新しいビジネスモデル、先端技術などと融合した革新的なアイデアだ。

金融領域

 金融領域のアクセラレータプログラムは、AIやIoT、フィンテック関連のアイデアを求めているようだ。仮想通貨などの出現により、今後、社会とお金の関係は大きく変わっていくことが予想される。その変化に適応するためには、先端技術や新たな考え方が必要不可欠。そうしたことからも、金融領域のアクセラレータープログラムはこの先、増えていくことが予測される。

・MUFG Digitalアクセラレータ

三菱UFJ銀行が邦銀初として主催する「MUFG Digitalアクセラレータ」は、フィンテックなどの領域における革新的な事業プランを募るアクセラレータープログラムだ。

自治領域

 自治体が主催、もしくは後援しているアクセラレータープログラムも多かった。特徴的なのは、他の領域と比べて応募のハードルが高いこと。事業ステージは問わないという募集は1件のみで、他はシードステージやアーリーステージに限定してるものばかりだ。このことから、アイデアをしっかり実現させようという意気込みが感じられる。

 また地域のマーケット特性を生かした事業や、土地に根ざした事業の募集もあったが、その辺りは自治体ならではの特色だろう。少子高齢化の影響を大きく受ける地方としては地方創生の鍵としてオープンイノベーションに期待をしているのかもしれない。

・TOHOKU GROWTH Accelerator

仙台市とMAKOTOが主催するアクセラレータープログラム。「大学研究シーズ」「ICT」「既存産業でのイノベーション」「東北の強みを活かした事業」というテーマで、スタートアップを募集している。地方から新たな事業を起こそうという意気込みが感じ取られる。

加速する世の中の変化に追随するための強力な一手

 ここまで見てきたとおり、2018年上半期だけでも実にさまざまな企業がアクセラレータープログラムが実施されている。募っているテーマやプロダクトの種類は千差万別であるが、すべての企業が欲しているのは、自社では作れない"何か"。そしてそれは、加速する世の中の変化に追随するための強力な一手になり得る。それを思うと、今後もアクセラレータープログラムの勢いはますます増していくはず。

 これまで以上に幅広い領域で開催されるであろうし、投資に至るまでのハードルが下がっていくことも考えられるだろう。結果的に多くのスタートアップにチャンスが生まれるかもしれない。その中から、世の中を大きく変えるイノベーションが生まれても不思議ではないのだ。