同組織では高齢者の課題を18個特定。その課題に対してCDIが連携している医療機関、研究機関、民間企業と組織横断的に取り組む。いわゆるオープンイノベーションの方法だ。「世界的にデータを持った企業が覇権を握る、ということが起きている。多くの場合それは自社のために使われるが、これらのプロジェクトではそのデータを人々の健康のために使う」とGur-Lavie氏は語る。

 シバ医療センターのNathalie Bloch氏は同医療センター内にあるシバ・イノベーション・センターの所長を務めている。シバ医療センターは同国で最大規模の病院で、同センターはオープンイノベーションの考え方に基づき研究プロジェクトを進めている。大手企業やスタートアップが医療センター内にオフィスを設け、「様々な立場の人が、医師や患者と共同で課題解決に取り組んでいる」(Bloch氏)。

シバ医療センターのNathalie Bloch氏(同医療センター内にあるシバ・イノベーション・センター所長)

 プロジェクトの中身は生命科学分野の研究、遠隔医療システムの開発、あるいはスマホアプリを活用した患者の行動変容の研究など。医療関係者だけでなくAI(人工知能)やデータ分析のスタッフもいる。サービスやプロダクトの開発には、近年注目を浴びているデザイン思考の手法も取り入れているという。

高齢化に伴う課題は世界共通

 イスラエルのベンチャーキャピタルであるaMoonのYair Schindel氏は、「今後、世界のトップ・テクノロジー企業は次々とヘルスケア領域に参入する。これは世界規模のインパクトをもたらす」と語る。

ベンチャーキャピタルであるaMoonのYair Schindel氏

 aMoonは「ヘルステック(健康とITの融合分野)」と生命科学分野に特化したイスラエル最大規模のベンチャーキャピタルで、約400社のスタートアップ起業に投資している。ポートフォリオ企業として血液からがんの早期発見を可能にする技術を持つ企業、AIによる画像診断支援を得意とする企業、軟骨の再生支援などの技術を保有する企業などを挙げる。