「伊藤忠商事アクセラレーター2018」の概要を説明する伊藤忠商事 食料カンパニー次世代バリューチェーン推進室の岡徹室長
伊藤忠商事が、異業種やベンチャー企業と共に新規ビジネスを創造するオープンイノベーションへの取り組みを加速している。
伊藤忠商事は2018年5月、2018~2020年度の中期経営計画「Brand-new Deal 2020」において、異業種やベンチャー企業との連携を進めていくと発表。2018年7月には、同社の食料カンパニーの経営資源を活用したオープンイノベーションを実現するために、画期的なアイデアや技術を持つスタートアップ企業の募集を開始した。半年後の2019年1月には新規ビジネスの発表にこぎ着けたいとしている。
専門部隊を新設しスピードアップ図る
7月9月、伊藤忠商事は、スタートアップコミュニティを運営するCreww(東京都目黒区)のプログラムを活用した「伊藤忠商事アクセラレーター2018」を開始した。
「今はスピード感が重要な時代」(食料カンパニー次世代バリューチェーン推進室・岡徹室長)という認識を背景に、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを多数実現させた実績がありスタートアップとの幅広いネットワークを持つCrewwと取り組むことを決めたという。
伊藤忠商事では、よりスピード感と熱量を持って新規ビジネスの創出に取り組むため、4月に食料カンパニー内に「次世代バリューチェーン推進室」を新設した。これまでのように既存の組織に属しながら新規事業創出の特命業務を手掛ける体制ではなく、“出島”を作ることによりスピードアップと成功確率の向上を図る狙いがある。今回の「伊藤忠商事アクセラレーター2018」は次世代バリューチェーン推進室が中心となって進めている。
川上から川下まで横断的な新サービスを期待
伊藤忠商事は世界62カ国に108拠点を持つ大手総合商社である。繊維、機械、金属、エネルギーなど幅広い分野で事業展開しているが、今回のオープンイノベーションプログラムでは食料分野における新規ビジネスの創造を目指す。
同社の食料カンパニーは、ユニー・ファミリーマートホールディングス、伊藤忠食品、日本アクセス、プリマハム、伊藤忠食糧、不二製油グループ、伊藤忠製糖、伊藤忠飼料、HYLIFE、ドールグループなど多様なグループ会社を擁する。伊藤忠商事アクセラレーター2018ではこれら多数の事業会社がスタートアップにとって協業可能な企業となる。
今回、食料カンパニーという大きな枠組みで募集した理由としては、生産者寄りの川上から消費者寄りの川下まであらゆる領域で、消費者にとってメリットのあるサービスを横断的に提供できる新規ビジネスの創出を期待していることが挙げられる。
岡徹室長は「これまでもマーケットインの発想でビジネスを組み立てていかなければと心掛けてきた。リテールも手掛けているので、消費者目線の仕事ができている部分もあるが、まだまだ足りないと思う」と話す。
また、例えばスタートアップ企業がファミリーマート向けに提案したビジネスプランがドールでも展開できるといった“ピポット展開”への期待も理由に挙げている。
実際に、エントリーしたスタートアップ企業は以下のような伊藤忠商事のさまざまな経営資源を活用できるという。
・多種多様な事業会社
(ユニー・ファミリーマートホールディングス、伊藤忠食品、日本アクセスなど)
・国境を越えた事業フィールド
(伊藤忠食料グループは世界各国に拠点を持つほか、80超の国や地域と取引している)
・巨大なネットワーク
(農場や工場、調達・販売・物流ネットワークなど)
・豊富なデータ
(商品、取引、市況などに関する膨大なデータを保有している)
・人材、ノウハウ、技術
(経営、財務、開発、農家サポート、貿易など幅広い人材や組織を保有している)
・電子マネー
(ユニー・ファミリーマートホールディングスと共同で電子マネーやポイントなどのフィンテック関連ビジネスの推進を図っている)
選定のポイントは「熱い思い」
今回、協業先を募集する事業領域は、「生産者から、リテール、消費者までのバリューチェーンにおける、バイオやゲノム、IoT、AI、ドローン、ロボティクス、ブロックチェーン、Fintechなどの全て」としている。あらゆる企業から、枠にとらわれない柔軟なアイデアや技術を募りたい考えだ。
採用する案件数は定めていない。魅力的な提案が多い場合には複数の企業と協業する可能性もあるという。協業先として選ばれた企業とは個別に相談を重ね、出資や業務提携などについて最適な協業体制を構築していきたいとしている。
協業先となる企業を選定する上で外せないポイントは、アイデア・技術・サービスに込められた「熱い思い」だという。岡室長は、「事業を立ち上げた思い、そして事業を何としてでも推進していくんだという熱い思いが重要。その思いに我々が共鳴してこそ、一緒に推進できる」と語った。





