別な収入手段がない限り早期退職は損
一方、毎月の生活費を25万円として50歳から年金受給時(65歳)まで暮らすとするとトータル4500万円が必要になります。いわゆる大企業の退職金は平均2000万円程度ですから、1000万円が加算されても年金受給時までの生活資金を退職金ですべて賄うにはいたりません。毎月10万円弱が足りない計算で、預貯金が1000万円あってようやく収支トントンという感じです。
もうひとつ、早期退職によって厚生年金や企業年金の保険料支払い期間が短くなります。結果、年金受給額も減ることになります。
退職金の算出方法は企業によって違いがあるとはいえ、加算退職金が年収の10倍になることはないでしょう。50歳で早期退職する場合に加算される退職金額が年収2年分となると、定年まで働いた方が、収入が多くなるのは明白です。早期退職後から年金受給までに別な収入手段がない限り、お金の損得の面から考えると早期退職は損ということになります。
ただし、現時点での保有資産額(現預金や有価証券、不動産などの時価)、早期退職後に収入を得る用意があるかどうか、住宅ローンや子どもの教育費などの大きな支出が残されているかどうか、などでその見方は大きく変わってきます。
相当ハードルが高い準備のための資産づくり
では、どのくらいの資産を持っていれば安心して早期退職ができるのでしょうか。あるFP(ファイナンシャル・プランナー)の試算によると、50歳で2億円あれば公的年金を気にすることなく余裕の暮らしが可能で、1億円なら現役時代とほぼ同等の暮らし、5000万円なら公的年金を含めて何とか不安なく老後を過ごすことができるそうです。
しかし、この試算には2つのカラクリがあります。1つめは、いずれも年率平均4~7%の投資収益を得ていることが前提になっていること。2つめは、これらの金額はすべて投資金額であることです。
資産全部を投資に回すことはできません。たとえば5000万円を投資するということは、生活資金などを考えると最低でもその2倍の1億円の資産は必要でしょう。早期退職のための資産づくりも相当ハードルが高いといえそうです。