3.SVと中国市場で動きが鈍い日本企業の共通点
以上で指摘された日本企業の課題は、中国国内市場でビジネスを展開する多くの日本企業にも共通している課題である。
こうした問題点の土台の部分にある根源的共通課題は、多くの日本企業が、「いいものを作れば売れる」と信じていることである。
この発想はグローバル市場のニーズを自分の目で確かめようとせず、日本の国内市場での経験がそのまま世界に通用するという大きな誤解に基づいていることによるものである。
各国の市場ニーズは大きく異なる。中国は地域によっても市場ニーズに大きな差異がある。しかも、その変化が日本よりはるかに速い。
そうした様々な市場ニーズをタイムリーに把握し、それに合わせて性能、サービス内容、価格、デザインなどを的確に適合させていかなければ中国国内市場での競争には勝てない。
日本国内ではライバル企業は多くの場合日本企業であるが、中国でのライバル企業は市場開拓のために世界中から中国にやって来る世界トップクラスのグローバル企業である。
そうした企業が市場ニーズに合わせて必死に努力している中で、日本企業だけが日本の経験に基づいて行動していれば競争に勝てるわけがない。それはシリコンバレーで成果が出ない企業についてもそのまま当てはまる。
つまり、このグローバル市場と向き合う時の謙虚さを欠く独善的な姿勢こそが日本企業の根本的欠陥である。
4.日本企業の根本的課題の解決策は何か
ではどうすれば日本企業は謙虚な姿勢でグローバル市場の様々なニーズをタイムリーに把握し、それに合わせた製品・サービスを的確に提供できるようになるのだろうか。
この根本的問題の解決は並大抵の努力では達成できない。経済のグローバル化に伴う市場ニーズの多様化に適合するよう企業経営そのものを変革することが必要となるからである。
変革の先頭に立つべきは社長自身である。また、この根本的問題の病弊の巣窟は研究開発部門である。
社長が主導して、研究開発部門が市場ニーズの多様化や急速な変化に的確に合わせて柔軟かつ迅速に製品・サービスの開発を行うよう、従来型の独善的姿勢を根底から改めさせることが必要である。