なぜ、IoTデバイスが狙われるのか

2017年10月、総務省が「IoTセキュリティ総合対策」を公表した。あらゆるものがネットワークにつながるIoT/AI時代の到来に際し、取り組むべき課題を整理したものだという。公表の背景には、近年深刻化するサイバー攻撃の脅威がある。

史上最大規模のDDoS攻撃(※1)として2016年に世界を騒然とさせたマルウェア「Mirai」。IoTデバイスであるネットワークカメラに感染し、アメリカのネット企業を中心に大きな被害を与えた。

また、2017年5月にはパソコンの身代金を要求してくる「WannaCry」というランサムウェアが世界中に蔓延。パソコンだけでなく、デジタルサイネージなどの端末にも感染が確認され、サイバー攻撃の恐ろしさを一般にも知らしめる事態となった。

MiraiやWannaCryの事例を通じて見えてくるのが、IoTデバイスのセキュリティ脆弱性だ。

今やネットに常時接続することが当たり前の世の中となり、パソコンにおいてはセキュリティ対策は必須のものとして認知されている。

しかし、パソコンとは異なりキーボードやディスプレイなどを備えないものが多く、入力インタフェースが貧弱なIoTデバイスでは、セキュリティ対策も十分に行なわれない場合が多い。特に、ネットワークカメラなどは脅威が少ないと考えられ、パスワードも初期値のまま運営されていることが多いようだ。

先に述べたMiraiなどのマルウェアは、こうしたIoTデバイスの脆弱性を狙ったものと言えるだろう(WannaCryはパソコンを狙ったものがたまたま脆弱なIoTデバイスにも感染した事例だと思われる)。

また、直近でも新たなセキュリティリスクが表面化した。2017年10月16日、無線LANで使われる「WPA2」というプロトコルに脆弱性が見つかったのだ。この脆弱性をついた攻撃を受けると、暗号化した通信内容が読み取られてしまうという。

「KRACKs」と名付けられたこの攻撃は広く一般的に使われている通信プロトコルの脆弱性をついたものであるため、パソコンであれIoTデバイスであれOSにかかわらず、通信するあらゆる端末に影響を及ぼす。その影響範囲はとても広くなるだろう。

今後、IoTデバイスはますます応用領域が広がっていく。例えば、自動運転車や医療機器などがIoT化された場合、サイバー攻撃は人命を危険にさらすことにもつながりかねない。

そのため早急に対応が必要と思われるが、なかなか進まない事情もあるようだ。

※1 大量の処理要求を送りつけ対象をサービス機能停止状態に追い込む攻撃手法