「FastWorks」の社内運動は、『リーン・スタートアップ』の著者である起業家エリック・リースを、経営トップ層が参加するワークショップにファシリテーターとして招聘したことが契機になったという。
浸透のスピードを最優先にして、あえて階層の上の方からカスケード方式でこの哲学を全社に浸透させたのである。
GE社員の行動規範「GE 5 Beliefs」
GEはトーマス・エジソンが創業し、東海岸のコネチカット州に本社を置く典型的なエスタブリッシュメント企業だが、イメルトは「FastWorks」浸透に伴って、GE社員の行動規範である「GE 5 Beliefs」(GEの5つの心得)も、シリコンバレーのスタートアップ企業ばりに全面的に刷新した。
GE 5 Beliefs
1. Customers Determine Our Success
2. Stay Lean to Go Fast
3. Lean and Adapt to Win
4. Empower and Inspire Each Other
5. Deliver Results in an Unsertain World
「FastWorks」と「GE 5 Beliefs」は、GEの企業文化の刷新の徹底ぶりを如実に示すものだ。IoT時代の企業の競争優位は、ヒト・モノ・カネの内部リソースの配分ではなく、「学習能力のスピードの速さ」であることが透けて見える。
一昨年の秋、日本経済新聞主催のセミナーで講演するために来日したイメルトが、「ピボット」(Pivot)というキーワードを反芻していたことは記憶に新しい。
「ピボット」とは、軸足(基本戦略)はそのままで、お客さまのフィードバックを見ながら、小刻みにサービスの方向性や打ち出し方を変えていく手法のことだ。「ピボット」は「FastWorks」を実践するGE社員の行動(ふるまい)がどうあるべきかを明快に示したものだ。
お客さまの豊かな体験価値を生み出す組織としてのGE
イメルトが「企業文化」の刷新とともに改革の対象としたのが、「組織運営」である。
イメルトはシリコンバレーに千人規模のソフトウエア開発センターを新設(現在のGEデジタル)、シスコシステムズやオラクルから若いエンジニアを大量に採用した。