GPSはアメリカ頼みのIoTインフラである

昨今、IoTの発展において、位置情報を取得するGPS(全地球測位システム)は重要な役割を果たしている。

すぐに思い浮かぶのは、自動運転技術だろう。自動運転カーはカメラで周辺環境を把握するほか、GPSによって位置情報を取得し運転に活用している。

GPSは新たなビジネスモデルも生み出している。ライドシェアサービスの「Uber」は、GPSによって得られる位置情報を基に乗客と空車をマッチングすることで双方の利便性を高め、急激に普及が進んでいった。

また、同じくIoTの応用領域として注目されている農業においても、GPSに期待する役割は大きい。

価格競争を背景とした大量生産需要、さらに農家の後継者不足・高齢化に伴う人手不足など、従来の農業が抱える問題は大きい。そうしたなかで、IoTを活用したスマート農業では、GPS搭載のトラクターやドローンを使うことで肥料を効率的に撒いたり、自動運転によって広い農地を耕したりなどが可能となる。農業が抱える問題の解決策として、期待されているのだ。

物流業界や旅行業界などでも活用されるGPSだが、現在のシステムはアメリカによって運用されていることはご存知の方も多いだろう。

このアメリカの「GPS」のような衛星測位システムは、近年、世界各国で開発・導入が進められている。ロシアでは「グロナス」という独自の測位衛星システムの運用を既に開始しており、欧州の「ガリレオ」、中国の「北斗」、インドの「IRNSS」など、各国で整備が進んでいる。

位置情報関連のビジネス展開が本格化してきているなかで、各国とも独自のシステム整備を急いでいる格好だ。

日本独自のGPSを求める動きへ

元々はアメリカが軍事用に打ち上げた人工衛星を民間でも使えるようにしたのが、現在のGPSシステムである。そのため、民間で利用が許されているデータにおいては、10メートル程度以内の精度となっている。

また、現在アメリカが運用するGPSは31機あるが、世界中で共有しているため、各地点で一度に利用できるのは6機程度にとどまり、安定した測位に必要とされる8機以上という条件を満たすことができない状況にある。

このため、日本の都市部や山間部では高い建物や山などが障害となり、GPS信号が届かず誤差が生じたり、使えなかったりして、安定したサービスを受けられない状況が生じることがある。

今後、位置情報の応用領域が広がっていくにあたって、より安定したサービス提供が望まれる。そのとき、アメリカに頼った現状のシステムでは限界を超えることができない。日本の都合で衛星数を増やすなど柔軟な運用はできないからである。

そこで登場したのが、日本独自の衛星「みちびき」による「衛星測位サービス」の開発計画だ。