今年の6月初旬に、陸海空の元将官6人で約10日間、中国を訪問してきた。中国政経懇談会として途切れることなく続く交流で今年で35回目となる。

 今回の訪問前には東京で世界ウイグル会議が開催され、また、訪問当日は天安門事件から23年目に当たるとともに、石原慎太郎・東京都知事を巡る尖閣購入問題で揺れるホットな中国であったが、それゆえに中国の極めて素直な本音を聞くことができた。

中国の本音が見えてきた!

死後30年、なお影響力残す毛沢東 - 中国

天安門に初お目見えした毛沢東・元国家主席(1966年8月16日)〔AFPBB News

 日頃はあまり見ることがない中国中央テレビ(CCTV)の中央版や地方版を見ているだけでも様々なことが見えてくる。例えば、6月4日は天安門事件の日だったが、それを放送していたCNNは突然ブラックアウトして見られなくなった。これが中国が言う報道の自由である。

 また、尖閣問題に関しても、中央、地方を問わず、毎日専門的にかつ具体的に放送されていた。その内容の質に自衛官のOBの我々でも思わず感心させられた。

 さて、本訪問の大きな特徴は、陸海空の部隊訪問と北京で行われた軍人同士の日中安全保障フォーラムである。海軍訪問については、上海の近くにある東海艦隊を希望したが、敵愾心旺盛で最後まで粘り強く調整したものの断られてしまった。主敵は日本と米国ということだろう。

 しかし、安保フォーラムと八一大楼(日本の防衛省みたいなところ)での中央軍事委員会総政治部主任、李上将(大将)との会見は大変意義のあるものだった。

 まず、安保フォーラムを中心として、そこから見えてきた本音を整理したいと思う。もちろん、尖閣が今の日中のホットポイントとはいえ、こんな時こそ中国の全体を眺め、目の前のことだけに左右されず、大きな視点に立って日本の生きざまを決めていかなければなるまい。

 フォーラムの冒頭は中国側が我々の基調報告についての意見表明と懸念事項についての質問である。我々の基調報告の主要な論点は、「2009年に中国が核心的利益と言い始めてから、2010年には南シナ海を核心的利益と言い、尖閣についても2012年になってから核心的利益であるかのように言い始めたこと」である。

 すなわち「核心的利益とは拡大し続けるものなのか? 核心的利益が領土、領海と同じような意味を持ち軍事力の使用もあるならば、それは覇権主義ではないか」ということだ。

 一方、中国の懸念は、「日米韓の軍事協力の可能性」「中国とフィリピンのスカボロー礁を巡る事案に対する日本の反応」「米国の軍事戦略の転換」そして「日本の尖閣を含む南西諸島の防衛」である。

 日米韓の軍事協力については、竹島を巡る韓国の行動により大きく後退してしまった。中国は大変喜んでいることだろう。フィリピンについては、日本に手を出すなということだろう。

 また、米国の戦略転換に関して中国は、「米国は今までもアジア太平洋地域から離れたことはなく、アジア太平洋のシフトは偽のスローガンであり実際には中国を対象としている」とはっきり言いのけたのである。