世界の航空史上に刻まれたあの失踪事件から4カ月。またも、マレーシア航空機を悪夢が襲った――。
7月17日、ウクライナ東部で、アムステルダム発クアラルンプール行き、ボーイング777型のマレーシア航空17便が、ウクライナ東部のドネツク州に墜落。83人の子供を含む乗客乗員計298人*全員が死亡した(24日発売の「週刊新潮」も筆者の分析記事で報道)。
* マレーシア航空発表によると、乗客283人と乗員15人。国籍内訳:オランダ人193人、マレーシア人43人=乗員15人含む、オーストラリア人27人、 インドネシア人12人、英国人10人、ドイツ人4人、ベルギー人4人、フィリピン人3人、カナダ人1人、ニュージーランド人1人(オランダは米国、英国は南アフリカとの二重国籍者を、それぞれ1人ずつ含む)
同じ航空会社、同型機。またもや謎の多い墜落事故
同機には、欧州などからは夏の休暇シーズンで、また、犠牲者が2番目に多いマレーシアからは目下のラマダン(断食月)が明ける7月下旬のハリラヤ(祝祭=日本の新年に相当)休暇を故郷で過ごそうとした家族連れが目立ち、世界航空事故史上最もショッキングで、痛ましいニュースとして報道された。
事故から1週間経過。国際的な調査結果を待たなければ確定はできないが、同機はウクライナ問題で紛争が続く中、親ロシア武装勢力によって“撃墜”されたという見方が有力だ。背景には、ウクライナ政府を支持する米国と、親ロシア武装勢力を支持するロシアの“超大国の代理戦争”を巡る新冷戦時代の覇権争いがある。
しかし、「なぜ、またもマレーシア機なのか」「どうして撃墜されたのか」・・・。航空史上でも例を見ない同じ航空会社、しかも同じ最新鋭のボーイング777型機に起きた事件で、合わせて537人が犠牲となり、確定的な物的証拠がない現段階では、またも疑問や謎が多い事故となった。
21日深夜、マレーシアのナジブ首相は親ロシア武装勢力のリーダーと電話会談し、遺体の速やかな移送、ブラックボックスをマレーシア調査団へ引き渡すこと、国際調査団による事故現場の調査・検証を認める双方および欧州政府関係諸国との合意事項を確認、声明を発表。22日、ブラックボックスがマレーシア当局に手渡され、遺体もウクライナ東部のハリコフ市に到着した。
今後の事故原因の詳細な報告が待たれるが、一方で、すでに事故から1週間が過ぎ、事故現場では親ロシア武装勢力による証拠隠滅の動きが多々見られ、「ミサイルの残骸は」「どこからミサイルが発射されたか」、などの決定的な原因究明は困難が予想される。
経営難に追い打ちをかける事故の連続
筆者が今回の事故を知ったのは、17日午後11時ごろ、マレーシアの国営ベルナマ通信の一報。また、その直後、首相府からWhatsApp(ワッツアップ、米国のコミュニケーションアプリ)を通じ、筆者の携帯電話に連絡が入った。
「何、17便?」というのが第一印象で、またも、マレーシア航空が惨事に巻き込まれたという事実を受け入れるのに戸惑った、というのが正直なところだ。