MOFという言葉を耳にされたことがあるだろうか? 正式な名称は、Meilleur Ouvrier de France(メイヤー・ウヴリエ・ド・フランス)。日本語にすると、フランス最優秀職人という具合になる。
フランスの職人があこがれるMOFタイトル
そもそもはフランスの伝統的な手仕事の保護継承を目的として第1次大戦後に設けられた称号で、認定のための初回のコンクールが行われたのは1924年。以後ほぼ3~4年に1度の割合で開かれ、現在に至っている。
対象となる分野は、レストラン、ホテル、食品、建築、テキスタイル、皮革、木工、家具、金属加工、被服、宝飾、音楽関連、陶器、ガラス関連など多岐にわたる。
さらにその下に枝分かれするような形で、石工、樽職人、革職人、楽器製造業、パン職人、パティシエなど、具体的に138の手仕事、専門職が指定されている。
MOFのタイトルを持っているというのは超一流の技術者の証し。社会的な認知度はもちろん、分野によっては国際的にもその知名度は高い。
さて、これは日本でいうとどのくらいのレベルであるのかという質問をよく受ける。それに対して、あくまでも私見だが、人間国宝と伝統工芸士の間くらいと説明するのが適当なのではないかと思っている。
若手でも選ばれる人間国宝のような存在
カテゴリーによっては数人のタイトル保持者しかいないということを思えば、日本の人間国宝と同じくらいの希少価値ということになる。
ただし、人間国宝が、すでに輝かしいキャリアのほぼ終盤にさしかかって認定される、いわば褒賞のようなものであるのに対して、フランスのMOFは、審査に応募できるのが23歳以上という大きな違いがある。
また、日本の伝統工芸士は多分に地方の手業の保持を念頭に置いているのに対して、MOFは全国区。そんなことを考え合わせたゆえの意見である。
138の部門の中で、圧倒的多数の応募者とタイトル保持者を誇るのが「料理」の分野。前回2007年の認定者は22人を数える。パティシエ5人、パン職人4人、眼鏡職人、時計職人がそれぞれ1人、また分野によっては認定者0ということもあることを思えば、料理分野の盛況ぶりは明らかだ。