秀逸なコピーは見た人に次のアクションを促す(写真:AntonGrachev/Shutterstock)秀逸なコピーは見た人に次のアクションを促す(写真:AntonGrachev/Shutterstock)

 AIの台頭でなくなるかもしれない仕事として挙げられるコピーライター。BMW、KDDI、富士フイルムなどを担当し、40年にわたりコピーライターとして活動してきた中村ブラウン氏が初めてChatGPTを使ってみた感想は「ふざけるなよ!」という憤りだった。

 広告・宣伝、特にコピーライティングを考えるときに最も重要かつ時間と労力をかける「ターゲット分析」を、ChatGPTがものの数分で的確に行ったことへのショックもあった。だが、使いこなすにつれて「まだChatGPTができていない点」にも気づかされたという。ChatGPTがたどり着けない「人の心を動かす」コピーワークを生み出す手法とは何か。(JBpress編集部)

※この記事は、中村ブラウン氏の『ChatGPT 売れる文章術』(三笠書房)を一部抜粋・編集したものです。

次のアクションを促すコピー

(中村ブラウン:広告クリエイター)

【「え!?」と問いかける】
例:「なんで、私が東大に!?」「BMWのホイールはなぜ汚れやすいか?」

 キャッチコピーは次を読ませる役割を持っていると言いました。それは、ボディコピーを読ませたり、次のアクションとして「連絡や資料請求」を促すことでもあります。

 読み手にそういうアクションを取らせるのに効果的なのが、「クイズのような問いかけ」です。その問いかけが興味深ければ興味深いほど、次のアクションを誘発することができます。

 そういう点で、素晴らしいと思ったのは四谷学院のポスターに使われた「なんで、私が東大に!?」でした。噂によると、この塾はこのキャッチコピーで企業業績を一気に高めたということです。たった一本のキャッチコピーが企業の行方を変えてしまうという、ものすごい例ですね。

 もう一つは、私が自動車雑誌に出稿した「BMWのブレーキ性能」を訴求するキャッチコピーです。

 BMWのブレーキ性能が強力な理由の一つとして、ブレーキパッドの摩耗(減り)の早さがあります。簡単に言えば、摩耗させることでブレーキディスクに起こる熱(耐フェード性)を抑えたり、摩擦係数を上げることによってブレーキング性能を高めたりしているわけです。

 その結果として、パッドのカスがホイールに付着しやすくなる。それを逆手にとって、「BMWのホイールはなぜ汚れやすいか?」というクイズにして投げかけたわけです。

 この手法は、伝えたい内容を読ませるのに効果的だと言えます。

【常識を疑わせる】 
例:「千円札は拾うな。」「嫌われる勇気」

 自分が信じていたことを否定されると、「なぜ!?」という気持ちが湧いて好奇心を持ちます。特に常識とは真逆のことを言われると、その気持ちはもっと高まります。

 キャッチコピーの例はともにベストセラーとなった本のタイトルです。このタイトルを見て、本を手に取った方も多いのではないでしょうか。キャッチコピーでも、あえて常識とは逆のことを言って、注意をボディコピーに引き寄せることは可能です。