インターネット上に早く流出してほしい。
待ちに待っている1枚の写真がある。それは、米海軍艦艇の放水に対し、五星紅旗を掲げたトロール漁船上でお尻を向け、下着をズリ下げている船員の画像なのだ。米海軍が確かに撮影したはずだが、あまりにショッキングなために世に出せないのか。
「第2の海南島事件発生か!」。3月9日、米国防総省が声明を発表すると、ワシントンの米中関係専門家が色めき立った。前日の8日、米海軍の海洋調査船に中国艦艇が異常接近し、妨害活動を行ったというのだ。発足間もないオバマ政権は、ブッシュ前政権と同様に早くも米中関係で試練の時を迎えた。
海南島事件を思い出してみよう。ブッシュ政権発足直後の2001年4月、中国南部・海南島沖の公海上空で、米海軍の電子偵察機EP-3が偵察活動中に、中国海軍のJ-8II戦闘機が緊急発進し、空中衝突した。J-8II戦闘機が墜落し、EP-3は海南島の中国海軍基地に不時着。この事件の解決をめぐり、米中間には極度の緊張が走った。
一方、今回の事件のあらましは次のようになる。3月8日、海南島沖の公海上で、米海軍所属の海洋調査船インペッカブルが軍事活動に当たっていた、これに対し、中国海軍の情報収集艦や漁業監視船、国家海洋調査局の艦艇、2隻のトロール船が妨害活動を仕掛けた。中国側の5隻がインペッカブルに異常接近した後、うち2隻は進路を塞ぐようにインペッカブルの舳先15メールまで近づいた。このため、非武装の同船はたまらず消防ホースで放水。すると、中国側の船員が冒頭の「唖然行動」に出たので、米海軍がフィルムに収めたというわけだ。
海南島・三亜市の楡林海軍基地には、中国海軍・南洋艦隊が大規模な潜水艦基地を置く。Google Earth の最近の写真では、この基地に漢級及び晋級の攻撃型原潜が停泊しているのが、確認されている。また、2008年4月18日付の香港紙・文匯報は、中国海軍が同市亜竜湾にさらに大規模な原潜基地を「建設中」と報じている。
米紙の報道によると、インペッカブルは対潜哨戒活動に使われるソナーを海中に垂らして測定活動を行っており、異常接近した中国船はそのソナーを奪取しようと試みたらしい。とすればインペッカブルは、中国の潜水艦活動に対して何らかの偵察行動に当たっていたと見るのが自然だ。複数の安全保障専門家もこのように指摘している。
海洋調査めぐり、高まる米中間の緊張
「事件」直前、米海軍の海洋調査船に対する、中国艦艇の妨害活動がにわかに目立ち始めていた。
米国防総省の声明によれば、3月4日に黄海で活動中の米海軍海洋調査船ビクトリアスが、中国の漁業監視船に高輝度の探照灯を突然浴びせられた。翌5日、中国海洋調査局の飛行機が、同船のマストをかすめて通過。さらに同日、前述のインペッカブルの舳先に、中国海軍のフリゲート艦が異常接近した。「第2の海南島」事件前日の7日には、中国海軍の情報収集艦が無線を使い、インペッカブルに「退去しなければ不測の事態を招く」と警告する事態にまで至っていた。
「海南島事件の再来か!」と息を呑むほどの事件なのに、日本のメディアはなぜか極めて地味にしか扱わない。しかし、この2~3年、日中両国で合意したはずの事前通報がないまま、日本の排他的経済水域(EEZ)で活動する中国の海洋調査船の事例が目立っている。しかし、外務省の記者会見では「第2の海南島事件」の日本への影響に関する質問は皆無と言ってよい。