吉越浩一郎さんに会いに、東京都・京橋の個人事務所を訪れた。
『吉越式利益マックスの部下操縦術』吉越 浩一郎著、幻冬舎、952円(税別)
ご存知の通り、吉越さんは外資系の婦人下着メーカー、トリンプの元社長である。「早朝会議」「がんばるタイム」「ノー残業デー」などユニークな施策を次々に取り入れ、19期連続の増収増益を成し遂げた名経営者だ。
2006年に、以前からの宣言通り60歳で社長を退任。会長職も相談役も引き受けず、ビジネスの世界からすっぱりと足を洗った。その潔い引退ぶりも話題となった。
実際に会う吉越さんは終始にこやかで、笑顔を絶やさない。物腰も柔らかい。だが、トリンプ時代の仕事ぶりは、自分に対してはもちろん、他人に対しても相当厳しかったようだ。
例えば吉越さんはいろいろな改革を会社に持ち込もうとしたので、社内の一部から反感を買うことになった。それでも、「会社にとって最大の利益がもたらされること」だけを正義とし、「心を鬼にして」改革を断行していったという。
また、あらゆる仕事にデッドラインを設け、デッドラインを守れない部下に対しては、衆人環視の中で徹底的に叱った。「デッドラインは守らなくてもいいもの」という既成事実が1つでもできてしまうと、会社全体でデッドラインが守られなくなってしまう。だから、やはり「鬼」となって叱るのである。
ホウレンソウなんてやめなさい
吉越さんの最新刊『吉越式 利益マックスの部下操縦術』は、悩める上司に向けて、部下育成の極意を語った本である。本書においても、部下に対する厳しい姿勢が表れている。
そもそも吉越さんは最近は「部下に媚びる上司が多すぎる」と嘆く。たとえ部下に腹の中で「殴ってやりたい」と思われようとも、それでもなお、正しいと思ったことを部下に命じ、実行していける管理職が本物の管理職なのだと言う。
さらに言えば、部下を手取り足取り教えるのはもっての他、ということになる。部下は教えずとも、勝手に育つものなのだ。だから、いちいち面倒を見てかまっていてはいけない。
よく上司と部下のコミュニケーションの基本として「ホウレンソウ」、つまり報告・連絡・相談の大切さが唱えられる。しかし吉越さんはこの考えに真っ向から反対する。
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