まさに「継続は力なり」である。サントリーのビール事業が1963年の参入以来、2008年に初めての黒字化を達成した。
「非上場企業だから続けられた」と言えばそれまでだが、それにしても、よく今まで撤退しなかったものだ。初志を貫いて事業を継続すれば、いつかは実を結ぶ。その格好のモデルケースとなるのだろう。
ビール事業だけではない。やはり利益を挙げてきたわけではないが、サントリーが決して撤退しようとしない事業がある。美術や音楽など芸術文化を支援する「文化事業」だ。いわゆるメセナ活動である。
もともとサントリーは、社会との結びつきを非常に強く意識している会社だ。創業社長の鳥井信治郎氏は「やってみなはれ」という言葉で有名だが、鳥井氏の経営哲学を語るうえで欠かせない言葉がもう1つある。それは「利益三分主義」という言葉だ。
企業は社会の一員であり、社会とともにある。だから事業で得た利益は会社や株主、社員のために使うだけでなく、3分の1は社会にお返ししよう、という考えだ。実際に、鳥井氏は老人ホームや保育園などを設立し、様々な社会貢献活動に取り組んだ。
続いて2代目社長となった佐治敬三氏は「文化で社会にお返ししよう」と考え、サントリー美術館、サントリーミュージアム、サントリー音楽財団、そしてサントリーホールなどを次々と設立した。
バブル崩壊後もしっかりと継続
サントリーホールは、クラシック音楽のためのコンサートホールとして1986年に建てられた。実は、サントリーホールの土地はサントリーのものではない。所有者は森ビルであり、サントリーは毎年、森ビルに何億円もの土地使用料を払い続けている。そのうえ世界中から著名な演奏家やオーケストラを招いては、日本の音楽ファンに赤字覚悟でコンサートを提供し続けているのだ。
かつてバブル華やかなりし頃、多くの日本企業がメセナ活動に飛びついたが、バブル崩壊とともに次々と手を引いていった。しかし、サントリーはそんな狂騒をよそに、今も揺らぐことなくホールの運営を続けている。