先行販売しているアメリカではすでに人気となっている「モデルY」

(井元康一郎:自動車ジャーナリスト)

 昨年3月に主力モデルの中型BEV(バッテリー式電気自動車)「モデル3」の販売価格を大幅に引き下げた米テスラ。日本では販売台数を公表していないが、ほとんどのブランドを網羅する日本自動車輸入組合の統計における「その他」の数から2021年は前年の約2.8倍、5000台以上を販売したものと推定できる。同年の世界販売93万6000台に対して1%未満にすぎないが、一部の好事家向けから量販ブランドへと一歩前進したと言えよう。

気になる「モデルY」の性能は?

 モデル3は2017年にアメリカで登場してからテスラの最量販車種となっていたが、昨年は2020年に発表した新型車「モデルY」がアメリカでモデル3に代わって販売トップに立った。中国ではまだモデル3のほうが優越しているが、昨年後期にはモデルYがモデル3を上回る月が目につくようになってきた。2022年は逆転する可能性が高い。

 モデルYはモデル3と同じ中型クラスで、世界的に人気が高まっているクーペSUVボディのモデルである。最低地上高は165mmとモデル3より余裕があり、室内容積も大きい。認可の都合上か日本では5人乗りのみだが、本国では後部にエマージェンシーシートを装備して7人乗りにすることも可能であるという。

 モデルYについて、日本法人のテスラジャパンはいまだ事前受注を開始していないが、公式サイトで情報発信を行っている。今年中には発売されるとみていいだろう。

 はたして日本において、このモデルYは“買い”なのだろうか。

 性能的には問題ないだろう。モデルYには強力な電気モーターを搭載した「パフォーマンス」と標準型の「ロングレンジAWD(4輪駆動)」の2種類があるが、ロングレンジAWDでも公称の0─100km/h加速は5.0秒。パフォーマンスに至っては3.7秒だ。どちらもSUVとしては驚異的な速さである。

 筆者はモデル3で0─100km/h加速タイムをGPS計測したことがあるが、ロングレンジAWDで4.2秒、パフォーマンスでは3.4秒と、メーター読みでない実測ベースで公称値がきっちり出ていたので、モデルYも額面通りの“爆速”を発揮してくれることだろう。

 加速力だけでなくハンドリングもしっかり仕上げてくるものと考えられる。モデル3で印象的だったのは加速力以上にハンドリング。ロングレンジAWDでは2900km、パフォーマンスでは500kmほどのテストドライブだったが、路面が良いところばかりでなく荒れた山道でも並みいるスポーツセダンが青くなるくらいにロードホールディングが良かった。

 テイスト的にも非常にファントゥドライブである。その性能を出すのに少なからず貢献していたと思われるのが制御の精密な電動AWDだが、モデルYは全モデルAWDなので、どちらを選んでも恩恵は受けられそうだ。