保険金の請求を本人ができないときはどうする?

 ケガや病気での入院は突然起きるもの。保険に入っているので心配はないと思っていたら、自分で保険の給付金請求が難しい状態に陥ってしまう、あるいは保険会社との連絡を取れない状況になってしまう……そんな可能性もありますよね。そんな時のために、指定代理人や家族登録などの設定を行っておくことが大切です。

給付金請求手続きは原則、契約者か被保険者本人が行う

 ケガや病気で入院をした際に給付金を受け取れる医療保険では、契約者あるいは被保険者本人が給付金の請求手続きを行うのが原則です。給付金の請求から支払いまでは、保険会社によっても多少異なりますが、以下のような流れで行います。

【給付金請求手続きの一般的な流れ】

  1. 電話やウェブサイト上で保険会社へ連絡をし、給付金請求手続きを行いたい旨を伝える
  2. 保険会社から案内された必要書類(診断書など)を一式準備し、保険会社へ送付する
  3. 保険会社に書類が到着し次第、内容を確認し、支払可否が決定される
  4. 支払いが決定された場合、あらかじめ指定していた口座に給付金が振り込まれ、支払い明細が保険会社より送付される

 しかし、ケガや病気の状態によっては自分で給付金請求の意思表示を行うことが難しい場合もあります。病名が本人には伏せられてご家族だけに知らされているケースでも、請求に関連する診断書などを本人が揃えられず、給付金請求ができないことも考えられます。

請求手続きを行う人を指定する「指定代理請求人制度」

 そうした特別な事情がある場合に、本人に代わって給付金の請求手続きを行う人を指定するのが、「指定代理請求人制度」です。

 指定代理請求人は、給付金の請求手続きの他に、保険料の払込免除の手続きなども行えます。保険の申し込み時に、保障内容などの設定と合わせて指定を行うのが一般的で、指定に伴い保険料が上がるといったことはありません。

 指定代理請求人には、以下のような範囲の人を指定できます。

【指定代理請求人に指定できる人の一例】

  • 被保険者の戸籍上の配偶者
  • 被保険者の直系血族、あるいは兄弟姉妹、甥姪
  • 被保険者と同居または生計を一にしている被保険者の3親等内の親族
  • 被保険者の財産管理を行っている人
  • 被保険者の療養看護に努めている人 …など

 ※一定の条件を満たしていれば、事実婚の配偶者や同性パートナーを指定できる保険会社もあります。詳しくは保険会社のウェブサイトなどをご確認ください。

 指定代理請求人に保険会社から「あなたが指定代理請求人に指定されました」といった連絡がされることは、基本的にはありません。よって、被保険者が指定代理請求人本人へ指定したことを伝えていないと、もしもの時に指定代理請求人が手続きを行えない可能性もあります。指定代理請求人に指定した人へは、その旨を伝えるのを忘れないようにしましょう。

 また、指定代理請求人により給付金の請求が行われた場合、保険の契約内容によってはその時点で保障がなくなる可能性もあるので、その点は留意が必要です。一度給付金を受け取ったら保障がなくなるタイプなどの場合、事前に「どういったケースで保障を利用してほしい」など、指定代理請求人と話し合っておくのも良いかもしれません。

指定代理請求人を指定保険給付金の請求漏れを防ぐためにも指定代理請求人を指定することが大切

「家族登録制度」とは? 指定代理請求人との違い

 指定代理請求人と似た仕組みに、「家族登録制度」というものがあります。家族登録制度とは、災害などで契約者と連絡が取れない場合に、保険会社からの連絡を受ける人を3親等以内の親族などから同意を得て、指定するものです。

 こちらは契約内容の確認や保険会社へ書類取り寄せの連絡をするなど、できることは限定的です。指定代理請求人と違い、被保険者に代わって請求手続きを行うことはできません。しかし、非常事態時などに給付金の請求漏れが起きないように、保険会社と契約者を橋渡しする大切な役割です。

給付金をしっかり受け取るためにどちらも設定を!

 指定代理請求人は、後から追加で指定をしたり、変更したりもできます。必要に応じて、一番身近で頼れる人を指定しておくと、安心できそうですね。家族登録制度も併用しておけば、給付金の請求漏れもより防げるでしょう。

 万が一、指定代理請求人を設定しないまま、契約者や被保険者本人が手続きを行うのが難しい状態になってしまった場合、成年後見人が保険に関する手続きを行えるケースもあります。保険会社によっては成年後見人選任をサポートするサービスが用意されていますので、指定代理請求人を指定するのが難しい人は、保険を検討している人はそういったサービスがあるかどうかも確認してみてくださいね。