「電動化」という言葉を巡って報道機関に苦言を述べた日本自動車工業会会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長(写真:つのだよしお/アフロ)

「2030年代半ばに、国内の新車販売をすべて電動自動車にする」という目標を政府が発表して以来、自動車業界が揺れている。政府の目標設定や自動車業界の思惑、世界に広がるカーボンニュートラルの波について、『データでわかる2030年 地球のすがた』の著者で、世界の環境政策やエネルギー政策に詳しいニューラルの夫馬賢治CEOが解説する。

(夫馬賢治:ニューラルCEO)

急に慌ただしくなってきた自動車業界

 12月に入り、急に自動車業界の話題が紙面を賑わせるようになっている。12月3日にメディアが一斉に、「経済産業省が2030年代半ばに国内の新車をすべて電動化自動車のみに規制する方向で調整している」と報じられると、翌日から連日のように「ガソリン車」「電動化」という言葉がバンバン飛び出すようになった。

 さらに、12月17日には、日本自動車工業会会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長が、「電動化=EV(電気自動車)ではない。電動化にはEV、FCV(燃料電池車)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HV)も含まれることを正しく報道してほしい」と報道機関に苦言を呈すなど、自動車業界が緊迫化している様子が伝わってくる。

 昨今の報道から自動車業界の状況を知った人は、もしかすると政府も自動車業界もこれまで何もせずに静観し、ここに来て急に世界の気候変動対策、脱炭素化の波を受けていると思われるかもしれない。しかし実態はもっと深刻だ。