9月4日の朝日新聞の紙面。従来の朝日の主張と異なる世論調査結果をどう受け止めるのか?

(政策コンサルタント:原 英史)

 世論調査のかなりの部分は、本気で民意を測っているわけではない。例えばここ数年の朝日新聞では、世論調査を受けて、こんな見出しの記事が出ることが多かった。

・検察庁法改正「反対」64% 朝日調査(2020年5月)
・桜を見る会の首相説明「十分ではない」74% 世論調査(2019年12月)
・森友問題「決着ついていない」79% 朝日世論調査(2018年6月)
・加計問題「疑惑は晴れていない」83% 朝日世論調査(2018年5月)

「83%」などと極めて高い数値が示され、インパクトは強い。だが、これは裏を返せば、「たいていの人はそう答える」と分かりきった、わざわざ聞くまでもない質問をしたことを意味する。結論先にありきの調査だったわけだ(さらに、質問文で「たいていの人はそう答える」ように細工が施されていることもある。具体例は『正論』9月号掲載の拙稿『民意測れない世論調査』で説明したので、ご関心あればご覧いただきたい)。

紙面では政権批判してきたのに、世論は安倍政権を「評価」

 ポイントは、「たいていの人の答え」と「新聞の論調」が合致していたことだ。モリカケ・桜が典型例だが、記事・論説で政権を厳しく批判し、“トドメ”として「国民のほぼ総意だ!」と世論調査を使うスタイルが、パターンの一つとして確立していた。

 異変が起きたのが、2020年9月の世論調査だ。

 9月4日、『安倍政権を「評価」71% 本社世論調査』との見出しが掲げられた。

 これは朝日新聞の論調とは正反対。社説(8月29日付「最長政権突然の幕へ『安倍政治』の弊害 清算の時」など)では、

・「安定基盤を生かせず」成果は乏しかった、

・「長期政権のおごりや緩みから、政治的にも、政策的にも行き詰まり、民心が離れつつあった」、

 などと厳しく批判し、失政を検証する記事を次々に掲載する最中だった。

 おそらく朝日新聞は、逆の結果を想定していたと思う。「安倍政権を評価しない=7割」、「安倍政権で政治への信頼感低下=8割」などと見出しにしようと考えていたら、「評価する=71%」、「政治への信頼感は変わらない=59%」などと思わぬ結果が出てしまったのでないか。