いまからちょうど1カ月前の4月26日、中国で衝撃的な経済レポートが発表された。新型コロナウイルスの影響で、すでに中国国内の失業者は7000万人を超え、失業率は20.5%に上っているというのだ。中国国家統計局が5月15日に発表した4月の都市部の調査失業率は6.0%で、31大都市に限れば5.8%なので、公式発表とは3倍以上の乖離があることになる。
経済レポートの出所は、中泰証券研究所。中泰証券は、山東省済南市に本社を置く、中国10大証券会社の一角である。2001年5月に、山東省の9社の投資信託会社に所属する24の証券営業部が独立して、斎魯証券を設立。2015年7月に、中泰証券と社名変更した。4月29日に発表した「2019年財務報告」を見ると、昨年の売上高は約97億元(約1500億円)、純利益は約23億元(約350億円)に上っている。子会社も含めた社員数は7718人を数え、中国国内284カ所に支店を持つ。今年は株式上場を目指している。
中泰証券研究所は、上海のウォールストリートこと陸家嘴(ルージアズイ)の東亜銀行金融ビル18階に瀟洒なオフィスを構え、152人のエコノミストらを抱えている。2016年12月には、中国で最も著名な証券アナリストの一人である李訊雷(Li Xunlei)氏を所長に迎えたことで話題を呼んだ。
そんな由緒ある大手シンクタンクが発表したにもかかわらず、この経済レポートは発表後すぐに、当局からの圧力で、お蔵入りにされてしまった。つまり、そんなレポートなどもともと存在しなかったことになったのだ。さらに李訊雷所長は、名前にある雷のごとく電光石火で、クビになってしまった。
「幻のレポート」入手
私はこの「幻のレポート」を、1カ月かかけてようやく陸家嘴の関係者から入手した。全文は概要と4章立てになっているが、たしかに内容は衝撃的だ。以下、章ごとにその要旨を訳出してみる。まずは第1章「公布された失業率と経済現状の明らかな乖離」である。