市長選ではカジノ誘致は「白紙」とした林文子横浜市長だったが・・・。写真は2019年3月、東京で開催された国際女性会議WAW!に出席した際のもの(写真:田村翔/アフロ)

 横浜市は、カジノなどを含むIR=統合型リゾートの誘致を正式に表明しました。「白紙」から一転、誘致表明に転じた林市長に、市民が反発しています。一方、中野区では、中野サンプラザを含む中野駅前の再開発についても、「サンプラザを守る」と公約した区長が当選3カ月後にサンプラザ解体を表明し、区民が反発しています。なぜ、政治家の公約撤回が相次ぐのでしょうか。

IRは「白紙」から一転、「誘致表明」に

 横浜市は神奈川県東部に位置する神奈川最大の都市です。市区町村では唯一法定人口が300万人を超えています。しかし、財政は逼迫し、高齢者の増加にともなう社会保障費の増加が深刻な問題を引き起こしています。

 福祉と医療費の増加はとどまるところをしりません。生活保護を求める人が多いことに加えて、医療費が免除されることからさらに増えていきます。皮肉なことに高福祉の実現が福祉医療関連費用の増大を引き起こし、財政をさらに切迫させているのです。

 前回の選挙はどうだったのでしょうか? カジノ誘致に関しては各種調査により反対が7割近くになることが明らかになっていました。選挙戦では「白紙」を公約しています。自公の支持と連合の一部、菅官房長官の後ろ盾によって3選を果たしました。

「白紙」には新しい状態にすること。「まっさらな状態にしてやり直す」という意味があります。これはビジネスの場面に置き換えるとわかりやすいと思います。

「当社もコスト削減が厳しいのです。条件を飲めないのであれば取引を白紙にします」

 取引先がこのように言ってきたらどうでしょうか?条件が変更されなければ取引は中止になると考えるのが一般的です。何もなかった状態に戻るのですから。

 林市長は「白紙にすること」を公約しています。どのような前提条件が変更されたのか、誘致を正式に表明したのか説明が必要になると思われます。