金正日の思考

金総書記、中国国務委員と平壌で会談

中国の戴秉国・国務委員(左から2人目)と北朝鮮の金正日・総書記(中央、2010年12月9日〔AFPBB News

 朝鮮半島の情勢が我が国の安全保障に直接的にしかも大きな影響を与えることに議論の余地はない。金正日は何を仕出かすか分からない危険人物だと評する人も多い。しかし、彼の判断は北朝鮮の独裁的な為政者としては的確だ。

 周辺諸国にとっては危険かもしれないが、判断は正しいように思う。

 北朝鮮の国是、朝鮮労働党の党是は言うまでもなく南進赤化・南北統一であり、そのためには米国の干渉、特に米軍の関与を排除し韓国を孤立化して、工作活動で韓国内に北寄りの土壌を作り、機を見て一気に武力侵攻し目的を果たすというのがそのシナリオのようである。

 このためまず米国を排除する手段として核とミサイルを開発し、米国に一撃を加える能力を保持することを最重要な施策としている。

 国際的な非難を浴びても核実験を繰り返し、弾道ミサイルの開発を続けているのはそのためである。北朝鮮流に考えれば当然のことであり、金正日の判断と実践はまともだろう。

 逆に、北朝鮮に経済制裁を加えれば核とミサイルの開発をやめるのではないかと期待をしている人の方が判断を間違えているとも言える。

 金正日の理念は、「力が強ければやられないし、弱ければやられる」との考えであり、従って、核を持ちそれを使えるようにしなければ米国にやられるし、対等に話ができないと思っているのだろう。いわば、力による抑止というごく普通の考えである。

 北朝鮮がどのような行動に出るのかよく分からないと言う人も多いが、「力による抑止」を基本にしていると思われるので、むしろその判断は分かりやすいのではないかと思う。