経済急成長の活気であふれるハノイの街並み。最大投資国の日本のホンダやヤマハが寡占するバイク市場、日本が出資するベトナム初の都市鉄道計画など、町のいたるところに日系ブランドが目立つ(筆者撮影。ベトナム・ハノイ、2019年2月)

 ガラス張りのモダンなレストランが人目を惹く。

 ベトナムの首都・ハノイの旧市街地から車で20分ほどにある、北朝鮮直営の北朝鮮レストラン・ハノイ店。通称、「北レス」と呼ばれる。

 北の重要な外貨獲得“在外基地”で知られる。

 筆者も以前、訪れたことがある。北朝鮮名物、牛骨スープベースの平壌冷麺(ピョンヤン・レンミョン)が一番人気だ。

 容姿端麗なウエイトレスは、ベトナムでも人気が高い。その写真はネット上に拡散されており、韓国ではまさにアイドル並みの人気を誇っている。

 一方、このレストランは北の諜報活動や強制売春の舞台となっていることが、最近脱北した北朝鮮女性のウエイトレスによって暴露され始めている。

 そうしたレストランの数は、中国などアジア諸国を中心に今でも80か所ほどで経営されているという。

 このハノイのレストランに2017年、衝撃が走った。

 ベトナム政府が突然、北レスの賃貸契約延長を認めないと一方的に北朝鮮政府に申し送り、レストランは撤退を余儀なくされたからだ。

 ことの発端は、2年前の2月13日午前9時頃、混雑極めるマレーシアのクアラルンプール国際空港で大胆不敵にも、金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が暗殺された事件。

 正男氏の遺体からは猛毒の神経剤「VX」が検出された。