(大西康之:ジャーナリスト)
今秋、自らの回線を持つ「第四のMNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)」として携帯電話事業に参入する楽天が2月20日、その開発拠点となる「楽天クラウドイノベーションラボ」(東京都内)を報道陣に公開し、戦略の一部を明らかにした。楽天が構築しているのは「完全仮想化クラウドネットワーク」。つまり「従来の通信機器(ハード)を一切使わないネットワーク」である。驚くべき早さと安さで携帯電話通信網を構築するこの技術は、従来の通信機器メーカーの存在を無意味にしてしまう。久々に日本発のディスラプション(創造的破壊)が起きようとしている。
ソフトウエア更新だけで5Gに対応できる楽天のネットワーク
「今までの通信の概念を根底から覆すネットワークが完成しつつあります」
2月20日、楽天クラウドイノベーションラボ設立の記者会見に現れた楽天の三木谷浩史会長兼社長はラボの設備を前に、自信をみなぎらせた。
ここは楽天が今年10月にサービス開始を予定している携帯電話サービスで使う「完全仮想化クラウドネットワーク」の試験設備である。本番と同じ環境を整え、バグの早期発見など、ソフトウエアの品質チェックを繰り返す施設だ。
しかし三木谷氏の背後に並んでいるのは、従来の携帯電話基地局にある通信機器ではない。ラックに並んでいるのは、インターネットのデータセンターにある普通のサーバーである。