深夜、フリー記者仲間の寺澤有さんからメールが来た。彼の裁判で意見書を書いたお礼にホルモン焼きをおごってもらう約束をしていたので、その話かな、などのんびり開いたら、「明日、ある超大物がフリーの記者を対象に会見を開くので来ませんか」とある。そういえば、寺澤さんが記者クラブの開放を求めて、活発に取り組んでいるニュースを、インターネットで見ていた。

 私は朝日新聞社在社時代、新聞記者だった時はクラブの内側にいて、アエラ編集部に移ったとたんにクラブから蹴り出される側になった。両方を知っている者として、クラブ(会見)開放の動きにはずっと注目していた。

 特に、寺澤さんをはじめ、上杉隆さん、岩上安身さん、畠山理仁さんといったフリー記者たちの取り組みには注視していた。そこへこのお誘いである。

 寺澤さんが「超大物」が誰か言おうとしないのも「事前に漏れると困る」という大ニュースの匂いがして鼻がぴくぴくする。何だか面白そうだ。すぐに次の日の予定を全部キャンセルした。

なぬ! 小沢一郎がやって来て会見を開く?

 恥ずかしいことに、私はそのクラブ会見開放の「最前線」である首相官邸や総務省の会見に行ったことがない。なのに寺澤さんは「20席のうち2席をもらったので一緒に」という。まったく申し訳ない。恐縮、汗顔の至りである。

 そうしたら、当日朝になって「ニコニコニュース」の亀松太郎編集長から携帯電話に電話がかかってきた。亀松さんは私と同じように、かつて朝日新聞の記者だった。一緒にメシを食ったり、なんだかんだとユルい交流がある。

 留守電を再生したら、いつも通りののんびりした声で言うではないか。「今日、小沢一郎氏の会見があるんですけど、よかったらウガヤさんも来ませんか」

 なぬ! 小沢一郎!? そりゃ行きますわな。「ナマ小沢」が見られるからではない。フリー記者たちが自主的に開く「非記者クラブ会見」に、その行動や発言に最高度のニュースバリューがある小沢一郎氏が出てくる、ということそのものが驚きだ。

 もしかしたら「記者クラブ制度」を弱体化させる一撃になるかもしれない。マスメディア問題に関心のある記者として、これは逃すわけにいかない「歴史的な事件」だ。

 といった次第で、翌日午後3時半にJR原宿駅前で寺澤さんと待ち合わせした。派手に着飾ったお姉ちゃんやお兄ちゃん、修学旅行生が入り乱れる竹下通りをかき分けるように歩いて「ニコニコ本社」にたどり着いた。

 45分の会見の中身は新聞でも報道された。あちこちブログやUstreamに流れている。私が撮影した会見の写真も公開しておいたのでそちらを見てほしい。