元気な韓国企業といえばすぐにサムスン電子が思い浮かぶが、これをしのぐ勢いで急成長を続けているのが現代自動車だ。欧州やブラジル、中国市場では既にトヨタ自動車を抜き去り、米市場では日産自動車を射程範囲にとらえた。

韓国が誇る「肉食系企業」

現代自動車、米国で「ソナタ」14万台リコールへ ハンドル不具合

米市場での主力車種「ソナタ」〔AFPBB News

 韓国内では、ゼネコン最大手の現代建設買収合戦で力ずくの大逆転劇を演じた。現代自動車こそ、韓国の「肉食系企業」の代表と言えるだろう。

 「現代自動車に優先交渉権を与えることを決めた」。1月7日、現代建設の売却手続きを進めていた債権銀行団はこう発表した。2月中にも5兆ウォン(1円=約13ウォン)以上の大型M&Aが決着する見通しになった。

 つい2カ月前、債権銀行団は、現代自動車と激しく争っていた現代グループに優先交渉権を与えたばかりだった。現代グループが高額の買収金額を提示、企業規模などではるかに上回る現代自動車が一敗地にまみれる番狂わせが起こった。

 ところが、現代グループが買収金額を調達できるのかどうかに疑問が生じ、債権銀行団は優先交渉権を剥奪。改めて現代自動車を勝者としたのだ。

 もちろん、現代グループの資金調達に無理があったのは事実だろう。それでも、銀行団が1度決めた売却相手を変更するほどのことだったのか。

鄭夢九会長の逆鱗に触れた

 「本当の理由は、現代自動車の逆鱗に触れたこと」。韓国の経済人はこう明かす。

 現代財閥の発祥企業である現代建設買収にかける現代自動車の意気込みは、すさまじいものだったという。

 現代自動車グループの会長である鄭夢九(チョン・モング)氏は、現代財閥の創業者である鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の次男であり、「自分こそが後継者」との思いが強い。

 父親が創業した現代建設への愛着は誰よりも強く、何としても買収しなければならない企業だった。