日本の通信・放送業界には時代遅れの規制が残っている(写真はイメージ)

 政府の規制改革推進会議が検討している通信・放送の改革案が、論議を呼んでいる。その素案は、放送に固有の規制をなくして通信規制に一本化する方向で、テレビ局が自由に放送できるようになるのだが、なぜか民放連(日本民間放送連盟)が反対している。

 特に奇妙なのは、彼らが放送法の「政治的公平」の規制撤廃に反対していることだ。今までマスコミは放送法の規制強化に反対してきたが、今回その規制の撤廃に反対しているのは不可解だ。この背景には、世界から取り残された日本の通信・放送業界の現状がある。

言論の自由を規制する放送法第4条

 日本テレビ放送網の大久保好男社長は3月26日の定例会見で、規制改革推進会議の案は「民放事業者は不要だといっているのに等しく容認できない」と反対した。彼は6月に民放連の会長になる予定だから、これは民放連の方針と考えてもいいだろう。

 放送とは「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信」(放送法第2条)だから、通信と同じ規制をするのは当たり前だ。100年前にラジオ局ができたころは放送は特別なインフラだったが、今はインターネットで誰でも「放送」できる。

 しかし日本には、ラジオ時代の規制が残っている。放送法第4条は「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない」と定めている。

 1.公安及び善良な風俗を害しないこと
 2.政治的に公平であること
 3.報道は事実をまげないですること
 4.意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

 特に「政治的公平」の原則については、政府が放送局の政府批判を封殺できるので、憲法に定める表現の自由を侵害するという批判がある。

 電波法では、放送局が放送法に違反したときは政府は無線局の免許を停止できるので、2016年に高市早苗総務相は、国会で「放送法4条に違反した場合は電波を止めることがありうる」と答弁した。