1 空白の1年間の功罪

「敵基地攻撃能力」を提言、新防衛大綱で自民部会

防衛省内に配備された航空自衛隊の迎撃ミサイル「パトリオットPAC-3」〔AFPBB News

 民主党政権初の防衛計画の大綱(平成23年度以降に係る防衛計画の大綱:22大綱)が空白の1年間を経て、2010年12月17日に閣議決定された。

 従来の基盤的防衛力構想によることなく、動的防衛力を構築することとし、南西諸島方面の防衛態勢重視シフトを鮮明にしたのが大きな特色である。

 策定を1年間先延ばししたことに対して、当時は憤りを覚えたものであるが、顧みると結果的には良かったと言えよう。

 この1年の間に、東アジアの情勢は劇的に変化し、国民の外交や安全保障に関する認識は大きく変化し、それに応ずるかのように民主党政権も柔軟かつ現実的になった。

 そういう意味においては、北朝鮮の核・ミサイル脅威の更なる高まり・哨戒艦撃沈事件・延坪島砲撃事件や尖閣諸島における中国漁船の巡視船への体当たり・逮捕事案等は我が国の安全保障問題にとって大きな転機になった。

 まさに北朝鮮や中国の行動を奇貨として、かなり現実的大綱が策定されたと言える。どのような大綱が策定されるのかと恐れていた小生は安堵した。

 しかしながら、本大綱が今後数年間の防衛力の基本指針であることを踏まえると、果たして妥当性があるのかどうか、異議がある。