中国の国営新聞や国営放送は、中国を持ち上げるポジティブなニュースを流したがる。権力者のメディアだからそれは仕方のないことだろう。

国営メディアと異なり、ネットはネガティブ情報だらけ

中国のネットカフェ

 しかし、どんなに政権にとって好ましい記事を伝えようとしても、インターネットの普及がその意図を木っ端微塵に打ち砕くようになってきた。

 35歳以下を中心としたネットユーザーが爆発的に増えてきたことで、彼らの一部は中国の国営メディアが流している内容とは全く別の、時には正反対とも言えるようなネガティブな事実を積極的に受け止め、そして2次配信する。

 その中には新語を造る人もいて、的を射た事象は瞬く間にネット上に拡散し、さらに新聞もメディアの事件事象紹介についてのルールに従い、中央政府絡みの話題でなければ紹介する。

 年末になると様々なメディアやブロガーが印象に残った「今年のネット流行語」を発表した。特に権威的な発表があるわけではないので、横断的に見て最も多くのメディアやブログの「今年のネット流行語」の記事で紹介された単語を紹介しよう。

 多くのメディアやブロガーが筆頭に挙げたのが「我※是李剛(俺の親父は李剛だ。※は父に巴)」。今年10月河北省の大学構内で飲酒運転をした若者「李啓銘」が、1人を轢き殺し、1人に重傷を負わせた挙げ句、悪びれもせず言い放った言葉だ。

官僚の性悪な子供を指す「官二代」

 李剛とは現地公安局副局長。

 ここまで極端な事件は少ないが、80后と呼ばれる1980年代生まれの若者が親の権力を傘に、やりたい放題することは珍しくなくなった社会環境下、腐敗していると不評の官僚の息子「官二代」が起こした非道徳的な事件とあって、中国のネットは燃えた。

 ネットユーザーは全力で「人肉捜索」と呼ばれる身元調査を李啓銘に対して行い、李啓銘の情報を晒し、李啓銘の話題で盛り上がり、大手メディアをこの話題に引きずり込んだ。

 かくして自信に溢れた我儘息子や飲酒運転をする官二代を「我※是李剛」と呼ぶようになった。