ロンドン地下鉄爆発で英の警戒レベル最高度に

英ロンドン地下鉄の車内で起きた爆発事件の現場となったパーソンズグリーン駅で作業に当たる警察官ら(2017年9月15日撮影)。(c)AFP/Adrian DENNIS〔AFPBB News

 今年に入り、ヨーロッパ各地(特に西ヨーロッパ)におけるテロ事件が頻発し社会問題となっている。筆者が住む英国においても、今年に入ってから5つのテロ事件が起きている。

 2015年のパリ同時多発テロ事件以後、英国でもテロリズム(以下テロ)の可能性が危惧されてきた。

 英国の国内治安を司る情報機関であるMI5は2014年からシリアやイラクにおいてイスラム国が台頭したことにより国内におけるテロの警戒レベルを現在の警戒レベルである「Severe (深刻)」に「Substantial (要警戒)」から格上げしている。

 今年に入ってから、米国人歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)さんのマンチェスターで行われたコンサート会場において自爆テロが起きた5月およびロンドンの地下鉄内における爆発が起きた直後には、「Critical (危機的)」と最大限まで引き上げられた。

厳重警戒中に起きてしまったテロ

 ただ、その後すぐ「Severe (深刻)」に戻されている*1

 テロが警戒されている中でも、英国においてもついにテロが起きたというのが一般の英国国民の感覚であろう。

 そこで、今年英国で起きたテロ事件を中心に、なぜテロリストは最終的に敗北するのかを分析する。つまり、テロは長期的にはほぼ無意味であり、テロリストが用いる暴力は結局のところ、失敗に終わるということを議論する。

 英国の例も見るが、テロの効果を中心に扱うのでテロに関する全般的な考察でもある。

 そして、今年、2020年の東京五輪に向けていわゆる「テロ等準備罪」法案が国会で可決されたこともあり、テロを考える1つの機会となるだろう。

 どのようにテロを防ぐかという難題は本稿の範囲を超えるので扱わないが、英国の政府通信本部(GCHQ)の長官を務めたディビッド・オマンド(David Omand)氏は、警察や諜報機関の賢明な取り組みが必要であり、周辺各国との情報共有が重要になってくると論じている*2

*1=MI5ホームページhttps://www.mi5.gov.uk/threat-levels, accessed on 18 September 2107; Ashley Kirk: “How many people are killed by terrorist attacks in the UK”, The Telegraph (Online) 1 September 2017, http://www.telegraph.co.uk/news/0/many-people-killed-terrorist-attacks-uk/, accessed on 11 September 2017

*2=David Omand: “Keepin Europe Safe: Counterterrorism for the Continent”, Foreign Affairs Vol. 95 No. 5 (Sep/Oct 2016), pp. 83-93.