米国は世界最大の農産物輸出国であり、その輸出額は927億ドル(2007年)にもなる。ただ、米国は747億ドルもの農産物を輸入しているから、輸出額から輸入額を引いた純輸出額は180億ドルに留まる。

 一方、日本の農産物輸出額は23億ドルであり、輸入が460億ドルだから、純輸出額はマイナス437億ドルとなる。純輸出額が多い方が強いとすると、米国農業が強く、日本は弱いことになる。

 日本農業が弱いことは確かである。しかし、より広い視野から見ると、米国がダントツに強いとも言い切れない。

 2007年において農産物の純輸出額が最も多い国はどこか。それは、米国ではなくオランダである。

 オランダの輸出額は676億ドルと米国より少ないが、輸入額が397億ドルであるから純輸出額は279億ドルになり、米国を上回っている。世界で一番強い農業国はオランダということになる。

オランダ農業の強さの秘密は加工貿易にあり

 オランダは大きな国ではない。人口が1660万人、国土は4万1000平方キロメートル。農地面積は110万ヘクタールと日本の4分の1でしかない。そのオランダが強いのである。

 オランダ農業が強い秘密は、日本が工業で行っているように、加工貿易をしているためである。オランダは近隣のフランスやドイツから飼料用の小麦を輸入して家畜を育て、畜産物を製造し、それを輸出している。

 だが、牛乳の輸出額は2億1000万ドルとそれほど多くない。一方で、チーズの輸出額は29億ドルにもなっている。

 つまり、オランダは安い家畜飼料を周辺国から購入して牛乳を作るが、それを輸出するのではなく、付加価値を高めたチーズの輸出によって利益を得ている。また、トマトが15億ドル、トウガラシが11億ドルなど、野菜の輸出も盛んだ。

 農産物の中で穀物は安い。食料価格が高騰した2008年においても小麦の平均輸出価格は1トン当たり342ドルでしかない。一方、チーズは5652ドル、豚肉は2780ドル、トマトは1186ドル(いずれも1トン当たり)である。