政府は日本銀行の審議委員として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員の片岡剛士氏など2名をあてる人事案を衆参両院に提示した。片岡氏は安倍政権の前から「デフレは金融緩和が足りないせいだ」と主張してきた、ハードコアの「リフレ派」である。

 これで日銀政策委員会のメンバー9人はすべて安倍首相の選んだメンバーになり、緩和慎重派は一掃された。日銀の事務局に「リフレ派」はいないので、この人選は首相官邸の意向と思われる。日銀は今や安倍政権の「大政翼賛会」である。

日銀は「大政翼賛会」になる

 片岡氏は「デフレが失業と賃下げの原因だ」と主張してきた。これは経済学の常識の逆だが、消費者物価上昇率がゼロ前後まで下がったのに失業率は3%を下回り、ほぼ完全雇用といってよい水準になった。

 これを彼は「アベノミクスの成果」だというが、デフレという原因が直っていないのに、なぜ失業という結果だけが変わるのだろうか。完全失業率は図1のように民主党政権の2010年から下がり始め、それからずっと単調に下がっている。インフレ率とはまったく相関がない。

図1 完全失業率と自殺者数(2009年=100) 出所:厚生労働省『自殺対策白書』