2月3日(金)、ジョージ・マティス米国国防長官が来日した。安倍晋三首相はトランプ新政権発足後、初の重要閣僚の来日に対し、「揺るぎない同盟をさらに確固たるものにしたい」と述べて歓迎した。
翌4日に実施された稲田朋美防衛大臣との会談では、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄を支える公共財であること、そしてトランプ新政権との間で、日米同盟の重要性が相互に確認できたことは、大きく評価できる。
米国の「核の傘」による拡大抑止の維持、北朝鮮、中国に対する脅威認識、普天間飛行場の名護市辺野古への移転に対する相互認識の一致など大きな成果があった。
なかでも、マティス国防長官が「尖閣が安保条約5条の適用対象」と語ったこと、そして在日米軍駐留経費負担が「他国の模範」と述べたことが、日本政府にとっては、何よりの成果であった。記者会見における稲田防衛大臣の安堵と高揚感の入り混じった表情からも見てとれる。
尖閣への「5条適用対象」発言については、2014年4月、バラク・オバマ大統領訪日の際、安倍首相との首脳会談で初めて述べられたものである。彼は次のように述べた。「日本の施政下にある領域は日米安保条約第5条の適用対象であり、尖閣諸島もそれに含まれる」
政府の高揚感に強い違和感
今回のマティス発言は、トランプ政権でもこの姿勢を引き継ぐことを明らかにしたものであり、尖閣の領有権を狙う中国に対する力強いメッセージになる。日本にとっては、マティス訪日の最大成果であろう。
だが、手放しでは喜んでいるわけにはいかない。政府の安堵とその高揚感ぶり、そしてメディアの「はしゃぎぶり」に、大いなる違和感を感じたのは筆者だけではあるまい。これには2つの大きな問題が包含されている。
この発言は、安倍首相との会談の冒頭、マティス長官から自発的に述べられたものである。NHKは7時のニュースを報道中、わざわざ「ニュース速報」を出した。マティス米国防長官が「日米安全保障条約の第5条が『沖縄県の尖閣諸島に適用される』と明言した」と流したのだ。
だが、果たして「ニュース速報」を流すような性格のものなのだろうか。
ある評論家は「所領を安堵された御家人」のはしゃぎ様だと揶揄した。筆者も同感である。「アメリカさん、どうか尖閣を守ると言ってください」となりふり構わず懇願し続けた末に、「アメリカさんが言ってくれた。バンザイ!」というような、まるで属国意識丸出しのような報道ぶりに、思わず赤面した人も多いのではないだろうか。
安保法制の時も、イラク派遣の時もそうだった。「アメリカへの従属だ」「アメリカのポチ」だと批難してきたメディアがこういう報道をするから、余計に複雑な気分になる。
先述の通り、今回の発言は中国の「力による現状変更」への大きな抑止力となるのは違いない。だが、間違ってはならないのは、尖閣を含め、我が領土、領海、領空を守るのは日本人であるということだ。