9月7日、尖閣諸島で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突する事件が起きました。日本は中国漁船の船長を拘束しましたが、処分保留のまま釈放し国内外で大きな問題を提起しました。

尖閣は防衛、安全保障問題と認識すべき

尖閣問題、海保の中国漁船衝突ビデオを限定公開

海上保安庁の巡視船に体当たりした中国の漁船〔AFPBB News

 我が国は、日本の領土である尖閣諸島で起きた国内の事件として淡々と調査するとの姿勢を採っていましたが、この問題は単に国内の刑事事件という枠では解決できるものではなく、中国との間にある領土主権の解決が主題であることは明らかです。

 それにもかかわらず、中国の威圧に屈し日本の国益を全く無視した政治的措置が採られたことに腹立たしい思いがしています。

 尖閣諸島の問題は単に漁業権や資源開発の問題にとどまらず、我が国の防衛、安全保障に直接関わる問題であることをしっかりと国民に伝えていくことが大事な気がします。

 中国はこの十数年間、海軍・空軍・ミサイル部隊を中心に著しい軍事力強化を図ってきたことは周知の通りであり説明は要しないと思います。

 米国の国防総省が毎年議会に報告している「中国の軍事力」では、次のように注意を喚起しています。

沿岸防護型から外洋型へ、舵を大きく切った中国

 「近年の中国の軍事力は、豊かな経済力を背景にして外洋型海軍の建設を念頭に近代化を進めており、これまでのように自国と国境周辺の安全保障という狭義の役割から脱皮し、グローバルな視点で広く海洋への進出を狙いにしている」

 その指摘通り、中国軍とりわけ中国海軍の動きがこの数年活発になっています。

 2010年4月、潜水艦や駆逐艦など10隻の中国海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間の海峡(以後「沖縄・宮古海峡」と呼称する)を通過し、西太平洋海域で訓練した後再び同海峡を通過して帰還したことは記憶に新しいことですが、その後もこの種の行動が度々起きています。

 このことが示しているように、中国海軍は、「沿岸防護型」から「外洋型」へと脱皮し、空軍もそれに合わせて外洋への出撃能力を高めてきました。