日銀はこれから先、強気を装いながら撤退する、きわめて微妙な心理戦を強いられる

 日本銀行は11月1日の金融政策決定会合で、インフレ目標2%の達成時期を「2018年度ごろ」に先送りした。これは2018年4月~2019年3月という意味だから、黒田総裁の任期である2018年4月までの達成を断念したことを意味する。事実上の無期延期で、黒田氏の「敗北宣言」である。

 これ自体は驚くべきことではない。当コラムでも、黒田総裁の就任当初から「2%の達成は不可能であり、インフレ目標に期限を設けるのはナンセンスだ」と指摘してきた。インフレ目標は中央銀行の裁量を制限するために設けるもので、それを積極的に実現するものではない。まして日銀が「インフレ期待を押し上げる」なんてできるはずがなかった。

「量的・質的金融緩和」の失敗は予想通り

 2013年4月に日銀総裁に就任した黒田氏は「2年でマネタリーベースを2倍にし、2%のインフレ目標を実現する」という量的・質的金融緩和(QQE)を宣言した。

 これは当初はうまく行っているように見え、日銀の指標とするコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価上昇率)は、2014年前半には1.4%まで上がった。しかしその後は下がり、最近はマイナスだ。

 この原因は簡単で、QQEの成功も失敗もすべて円安(ドル高)によるものだ。初期に物価が上がった原因はドル高による輸入インフレだが、これは一時的な効果なので、為替レートが安定すると物価も上がらなくなった。

 円安で輸出企業の収益も上がったが、この効果も一時的なものだ。円安もマネタリーベースとは無関係で、図のように最近は逆相関になっている。

マネタリーベース(青・億円)と為替レート(右軸・ドル/円)、出所:日銀
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